第2話 コンビニと信号機とスキル発動
これぐらいいつも書ければと思います。
どうでもいいけど信号機の青って絶対緑色ですよね?
スクランブル交差点の中で叫んだ後、周りの人から白い目で見られたので俺はそそくさとそこから逃げた。人の対応まで元いた世界とそっくりだ。
「なんだなんだこの世界は?イメージと全然違うぞ?」
俺は歩きながら考える。今必要なものは情報だ。
周りを見るとなんだかコンビニに似ている店があったので入ってみることにした。
扉は自動ドア、レジのカウンターには肉まんのような食べ物や揚げ物が売っている。
「いらっしゃいませ」
このあいさつも元いた世界と変わらない。ただし、あいさつは、だ。
店員さんの髪が青色だった。
「…えっ?」
俺は一瞬戸惑ってしまった。無理もない。いままでほとんど異世界要素が無い中で急に出てきたそれっぽい感じ。青髪とかマジファンタジー!いや、待てよ。もしかしたら染めてるだけかもしれない。
「あの~、お客様?」
いや、でも転生した訳だから青髪の人だっているかもしれない。俺は考える。もしかしたら
「お客様!」
「はい!?」
すっとんきょうな声をあげてしまった。しまった、また周りが見えなくなっていた。
「他のお客様の迷惑になりますのでそこに立っているのはやめて頂けますか?」
店員が迷惑そうに俺に声をかけて来た。俺はどうやらドアとレジのちょうど真ん中に立っていたようだ。これは確かに邪魔だな。
「す、すいません」
俺はすぐにどいた。
俺がここに来たのは情報を手にいれるためだ。なるべく新聞、雑誌などの書物がいい。
雑誌売り場に行くと本のタイトルが全部理解できた。雑誌名をみる限り、元いた世界とさほど変わらないラインナップだった。
「なんだかなー」
雑誌の表紙をざっと見ても『魔王』も『勇者』も『魔物』も書いていない。今のところ異世界ファンタジー要素が『青髪のコンビニ店員』という微妙なものしかない。
俺は雑誌を一冊と新聞を一部。ついでに肉まんのような食べ物を一つ買おうと思った。
「1200メルになります」
青髪の店員さんはにこやかに対応してくれた。俺は上着のポケットから財布をだして、中を見た。
「あれ?」
一瞬焦った。財布の中にあったのは見慣れた貨幣ではなく金貨、銀貨、銅貨。「ああ、そういうこと」
俺はそう呟いた。おそらく女神は転生した時に困らないように死んだ時に持っていたお金を同じ価値の異世界通貨に替えてくれたのだ。サービスがいいじゃないか。
「これでお願いします」
財布から何枚か出してみる。なんだファンタジー要素ないと思ったら金貨が使えるってかなり異世界っぽいじゃないか。
店員さんはそれを見て、にこやかな表情を凍らせた。
「…お客様、大変申し訳無いんですが」
店員さんは笑顔を消して言った。
「これは『今の時代』は使えないって知っててやってんのか?」
めっちゃ怖かった。
ダッシュで逃げて来てしまった。
「なんだよ!あの女神がああああ!」
本日二度目の叫びを放った俺はあてもなく街をさ迷う。見知らぬ世界で情報は無い、お金は使えない、挙げ句変なヤツ扱いなんてゴメンだ。
しかし、実際これからどうするか。普通の異世界転生(という言い方もおかしいが)ならこういう時に近くの職業ギルドに行って登録するか、転生の時から何かしらの職業に就いているものだ。ところが俺はそうじゃない。魔王も魔物もいない世界にギルドなんてあるわけない。では何かしらの職業に就いているか?答えはNO。
女神アリスは三年ぶりの仕事と言っていた。この世界に魔王と魔物がいること前提で話をしていた。実際はそんな事ないのにだ。
「おい、兄ちゃん」
つまり、ここから導かれる結論はただ一つ。
女神アリスは下界を見ていなかった!世界の大規模な変化に気づかないほど長い間だ!
「シカトすんなよオラァ!」
大きな声をかけられた。その直後に肩を掴まれた。
驚いて振り向くと三人の男が立っていた。肩を掴んでいるのは赤い服を着た金髪の男だ。赤い服の男は言った。
「ちょっとツラァかせ」
この三人はいわゆるヤンキーだった。どこの世界にもいるんだな。俺は呟いた。悪い癖のせいで周りが見えなくなった時に赤い服の『シン』と呼ばれる男にぶつかってしまったらしい。俺は路地裏の奥に連れてかれた。周りは壁で囲まれていて、唯一の出口は三人がふさいでいる状況。
で、今金を要求されている。
「嫌ですよ、持ってないですよお金なんて」
俺は一応言ってみる。
「嘘をつくんじゃぁないよ、ちょっと跳んでみろよ」
黄色の服を着た男が言った。嘘はついてない。実際にこの世界で使えないお金なので、俺が持っているのはただの重りだ。
そのことを伝えようとするとシンに腹を殴られた。
「っ!」
息が詰まる。鈍い痛みが伝わる。吐き気がする。あまりの痛みにうずくまってしまう。
「やっぱり持っているじゃねえか」
ポケットからこぼれた財布を見てシンが言う。中身を確認してはしゃぎはじめる。
「おい見ろよゴウ、キタ!こいつ古い金しか入ってないぜ!」
「ほんとだぁ、すごい!本物だぁ!」
「あんまり触らない方がいいよゴウちゃん」
緑の服を着た男が言った。
赤がシン、黄色がゴウ、緑がキタ。
「信号機みたいな名前だな」
俺はぼそっと言った。何か言ってくるかと思ったが、幸い聞こえなかったようだ。
「おい、他に何か持っているか?」
シンが俺を見て言う。
「調べよう」
キタが言った。
後ろが壁なので逃げることができない。やはり戦うしかないのか。
「うりゃあああああ!」
俺は叫び声をあげながらシンに向かって行った。ひねり倒された。
「なんだこの本?」
ゴウが俺の服をあさって見つけた本。
「っ!返せ!」
俺は取り返そうともがくが、シンの力は強く簡単に離してくれそうにない。
「読めないね。見たことのない文字だ」
キタが興味がある素振りを見せる。
「ケケケケ、悔しかったら取り返してみろぉ」
ゴウが本を見せびらかして挑発してくる。
「クソっ!離せ!」
もがいてももがいても抜け出せない。俺は結局顔を殴られ、ダウンしてしまった。
「じゃあな、ありがとよ」
三人が笑いながら立ち去ろうとする。
このままでいいのか?
どこからか声が聞こえる。
逆にどうしろと?未知の世界で俺は勇者でも、英雄でもなかった。何の力も無く、街のヤンキーにさえボコボコにされる男だぞ?
俺は聞く。
取り返せ。お前はそれができる。
どうやって?
言うんだ、『手にいれる』と。『奪い返す』と。
「『手にいれる』…。『奪い返す』」
俺はもうろうとする意識の中で俺は立ち上がる。信号機の連中が振り向き、何かを口にする。俺には遠い世界の出来事のように思えた。
さあ、何を『盗む』?
誰かが聞いた。俺は答えた。
「俺から『奪った』ものだ!それを『盗み』返す!」
その瞬間、俺の周りには青白い光が浮かびあがった。すると信号機の連中が持っていた財布と本が光始めた。と、同時に俺の手元に財布と本が一瞬で移動した。まるで魔法のように。
唖然とする信号機の連中。俺は本が無事なことを確認し、
「良かった」
意識を手放してしまった。
「まさかお前、『魔法使い』?」
薄れる意識の中で聞こえた言葉、そして騒がしさと人影を目にして俺の意識は暗闇に落ちた。
次回、ヒロイン登場。そして設定の説明になります。
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