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捜2.5
冷えた大気が風となり 境内の木をざわめかせる
目の前の鳥居は 神の領域を現し
そこから先は身に感じる空気すら違う
背中の産毛が逆立つほどの畏怖
一歩先には踏み込めないもどかしさ
待つことしか出来ない己に憤る
喉から手が出るほど欲したモノ
それを手にし現れた男
抱きついて
くちづけて
さり気無く首に手を掛け
締め落とした
くたりと崩れた男の手から 神宝の鏡が転がり出る
己の口が きゅうっと吊り上がったのが分かった
足元に倒れる男を眇めた目で見下ろし
手袋を嵌めた手で 男の手から離れた神鏡を拾い上げ
無造作にバックに放り込む
ペディキュアが施された指が覗くサンダルのつま先で
男の腹をコンと一蹴りし
そのまま振り返りもせず鳥居の前から立ち去る
ごめんねぇボウヤ これが有ると困るのよアタシ達




