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第8話〜迷いの森〜

 そういえば、俺もあいつのうちまでの道のりは知らない。あいつと帰る時はいつも分かれ道で別れることにしているからだ。だからその先までついていったことはないし、ましてやチルドの住まいを見たことはなかった。

「………」

 俺は一瞬無事に奴の家にたどり着けるか不安になったが、今さら男がこんなところで退けるはずはなかった。どうせ町の中なら、夜になってもたいして怖くなしな。

 俺は学校を出ると、真っ直ぐいつもの帰り道を歩いた。チルドがいる時もあまり話はしないのだが、やはり一人だとどこか心寂しいものがある。しかも冬だから夕暮れの訪れが夏に比べると一時間以上も早かった。



 分かれ道にたどり着いた。

 チルドがいつも通っていくのは右の道。右の道は当時迷いの森と噂されていた森で、少し町の外からはみ出しているらしい。夕暮れのオレンジ色の太陽が、森をさえあに不気味な色に照らしている。

「え〜い、何をいまさらビビッていやがる!」

 俺は自分の顔を叩き、森に向かって歩き出す。足音に反応したのか、カラスが一斉上空に飛び上がり、俺のど肝を抜いた。

「く、くそぉ馬鹿カラスが驚かせやがって…」

 強がって言う俺の声は震えていた。やはりこの場所だけはあまり一人では来たくなかったんだよな。

気がついたら俺は弱音を吐いていた。ハッとなりもう一度渇を入れるために自分の顔をさっきより強めに叩く。

「いくぞ……」

 ああ、駄目だ。やはり声が震える。

 体は正直とはよく言ったものだ。

 俺は気がついたら普通の歩きから早足に、気がついたら走っていた。

 この迷いの森は昼間、太陽が差していてもやたら高い木のせいで、ほとんどその光は遮られてしまう。

 くそ、こんな森の中に住むなんてチルドの奴は意外に意地悪なのか。

 急にチルドが憎らしく見えた。

 いや、今はチルドを憎んでいる場合じゃない。それにあいつだって好き好んでこんなところに住むはずはない。きっと、両親が家を買うお金がなくて、やむなく家賃の安い(多分)この森の奥に住んでいるのだろう。

 チルドも災難だよな。でもきっと、あの性格だから「慣れれば平気」とか言うんだろうな。

 畜生、チルドの無関心さが今は少し欲しいぜ。

 俺は一直線に森を突っ走った。早く森を抜けてくれ。

 チルドの家よ、早く見えてくれ。俺は走りながら必死に祈った。


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