第7話〜突然のお使い〜
近況報告も済んだところでそろそろ話を冬に戻すかな。
この地方は結構冷え込みがきつく、冬になると風は極端に強くなる。毎年クラスで風邪をひく奴が続出する。現に去年、俺がいたクラスなんかはクラス全体の半分が風邪でダウンしていたため学級閉鎖になるほどだった。そして、うちのクラスでもぼちぼちその傾向が現れ始めていた。
その最初の標的がチルドだった。
担任の先生が出席簿とチルドの席を二、三回確認したが、本来チルドが座っているべき席は空席となっていた。
「今日はお休みね」
先生が機械的にチルドの欄に正の字の一辺を書き加える。一時間目が終わり、アリスが俺の元にやってきた。
「チルド君、今日はお休みみたいだね」
アリスは心底心配そうな顔をしながらつぶやいた。
「みたいだな。あいつが風邪をひくなんて珍しいな」
チルドは弱そうに見えて実は結構体は丈夫なんだよな。そのチルドが風邪を引くということは今年の風はよほどたちが悪いんだろう。
「あんまりしょぼくれるてるなよ。今日はあいつの代わりに猫達のところ行ってやろうぜ」
「そうだね」
アリスはやはり元気なさそうに頷いた。
そうそう、さっきの答えだが、それはどうやらチルドであると俺は睨んでいる。今回もそうだが、アリスはチルドに何かあるたびに、やたらとあいつのことを心配する傾向がある。その時ばかりはいつものあの元気な笑顔がどんよりとした感じになってしまい、端から見ればまるで別人のようだからだ。それほどまでにチルドを心配しているとなれば、もうこれは決定だろう。本人に聞いて確かめたわけではないがおそらくこの路線で間違いない。言えば本人は絶対否定するだろうからな。
その時いつも慰めるのは俺の役目だった。アリスとも、あの一件以来すっかり仲良くなっていたし、彼女のほうもよく俺を頼ってくれるし、俺もよく彼女には助けられていた。所謂持ちつ持たれつの仲なわけだ。
アリスの元気がない一日が終わり、帰り支度をしていると担任の先生が俺の元に歩み寄ってきた。
「渡辺君、確かチルド君と一番仲が良かったのはあなたよね。今日授業でやったところのノートとみんなの寄せ書きを彼の家に届けてあげてくれないかしら?」
「わかりました」
俺は断る理由などなかったので素直に頷くと、授業のノートと寄せ書きをかばんの中に詰め込み、教室を出た。アリスを誘おうかと思っていたのだが、彼女の姿は既に教室の中になかったし一人で行くことにした。先に見舞いにでも行っているのかとも思ったが、そう言えば彼女はチルドの家を知らない。
「他の用事かな…」
アリスのことを気にかけつつ、俺も教室を後にした。




