第2話〜チルドの自己紹介〜
「名前、チルド。………終わり」
早!
これまた突っ込みの入れられる自己紹介だった。いかにも何か言おうと考えていました風味のその間は何なんだ!?結局何も言わないし。
間がなかったらおそらく二秒で終わっていたぞ、今の自己紹介は。
流石に先生も見かねてチルドに「もう少し長く」とか「好きな食べ物とか教えてあげて」とかなんとかフォローに努めている。
「好きな食べ物は……」
ふんふん、好きな食べ物は?
「………」
『………』
クラス内に静寂が起こる。こういう奴に限って実は高級なものが好きだったり、あるいは逆に庶民的なものが好きだったりするのだ。
「……やっぱりやめた」
ドドドド――
クラスメート達と先生が盛大にこけた。あれだけ間を持たせておいて「やっぱりやめた」だとぉ?俺は呆れつつも若干怒りを覚えた。
「だって……」
お、まだ続きがあるのか?クラス内が再び静まる。
「………」
『………』
「……やっぱりやめた」
ドドドド――
再びクラス内で転げ落ちる音が響いた。
一体何なんだ、こいつは?皆、同じフレーズを二度も使ってまでお前の好きなものを聞きたかったのに、この扱いとは。しかし、もう俺たちには突っ込む気力もなかった。先生もまた同じで「これでいい?」と問いかけるチルドに対して機械的に頷くことしかできなかった。
と、これがアリスとチルドとの最初の出会いである。
感動もくそもない。