第25話〜魔王ジャックリース〜
「すまん……遅れた」
三度障子が開き、外から長い銀髪を束ねた長身の男が姿を現した。
「父さん…」
チルドが長身の男に向かってぽそっとつぶやいた。長身の男もチルドを見るなり、その場にしゃがみこみ「久しぶりだな…」とか言いながら頭撫で始めている。
「久しいな、魔王ジャックリース」
なんだって。今、アリスの親父はなんと言った?
確かに『魔王』と言ったよな。てことはこの長身の男が魔人戦争を引き起こした張本人で、チルドの親父なのか?それにしても男の俺が見てもこの人ってかっこいいな。透きとおるように綺麗な赤眼だし、長い銀髪も後ろで丁寧にまとめてられている。なんだか、ナナルといい、チルドの親父ジャックリースといい、チルドの両親はとてつもなく変わり者のようである。
それも両極端に。
「ナナルから聞いたが仕事をしていたのか?」
「その通りだ。最近は少しばかり景気が悪い。あんたのところは大丈夫なのか、ドライブ」
「わしのところも今のところは大丈夫だ。しかし、最近の若い者は力任せに事を運びすぎる傾向がある故、衝突は避けられんな」
「魔界もそんなところだ。魔界の若者は血の気が多すぎて苦労する」
うわぁ〜、子供いることそっちのけで景気の話をしだしたよ。それにしてもこの二人の話しぶりからすると、魔界も天使界もさほど人間界と社会制度は変わらないんだな。もうちょっとおどろおどろしいものかと思っていた。
「彼が、例の少年か?」
チルドの父、ドライブは俺を見るなり丁寧に挨拶をしてきた。俺、とてもこの人が魔王だなんて信じられない。こういう美形で笑顔や礼儀正しさの似合う親父って世の中にたくさんいるぞ。授業参観とか出席したら父兄にも生徒にももてること請け合いだな。
「早速でなんだが、そろそろ例の話に入ろう。アリス、チルド、お前たちもそろそろもとの姿に戻りなさい」
ドライブに言われ、アリスは太陽の首飾りに、チルドは大剣に手を添え目をつぶる。
二人の体が明るく輝き、そのシルエットは徐々に子供から大人へと変化していった。




