第22話〜駄菓子屋とメル姉さん〜
下校時間になり、アリスは約束どおり俺を自分の家に招待するから一緒に帰ろうと誘ってきた。チルドもついてきていることから、どうやらこいつも最初から呼ばれているようだった。
それにしても気になるのは、俺がアリスの家を知っているらしいということ。
どういうことだろう?俺はこいつの家に行ったこともなければ知りもしないはずなんだが。それに、女の子の家にいきなり押しかけていっても大丈夫なのだろうか。
「カズ君、さっきからだんまりだけど大丈夫?」
見兼ねたのかアリスが俺の顔を覗き込もうとしてきたので、俺は思わず顔を背けた。
変な想像をしている顔なんて見られたくないからな。
「はい、と〜ちゃ〜く!ここがあたしの家だよ」
「えぇ!ここだったのか?」
これは仰天物だった。
アリスの家はなんと俺が小さな頃から悪ガキグループとよく買いに来ていた駄菓子屋だった。
「ね、カズ君もよ〜く知ってるところだったでしょ?」
アリスは得意気に胸を張った。
確かによく知っていた。
駄菓子屋と言えば普通誰もがだいぶ年を食った婆さん辺りがにこにこしながら、時に怒鳴ったりして子供達を迎えてくれるというイメージがあると思う。が、この町の駄菓子屋は全く逆のパターンだった。店番をしているのは若くて、俺のような子供でも、うっとりするくらいの美人で、しかもいつも俺達を優しく見守ってくれている太陽の人だった。怒鳴ったりはしないが、一度悪さをすれば恐怖のくすぐり地獄が待ち構えているという点で恐れられもしていたが、基本的に怒らせなければ人畜無害、いや、俺のような子供を含めた町人全員の癒しだった。
ということは、アリスはあの人の娘だったのか。
「そういうこと」
アリスはやはり得意気に胸をそらした。
「あんなに美人でしとやかな人からどうしてアリスが生まれたんだ?」
あの人は外で遊ぶよりは室内で本を読んでいるほうが似合う。それにくすぐりを除けば暴力を振るうこともないだろうし……。
「なごぉ!」
アリスのチョップが俺の頭に炸裂する。
「カズ君、もっと殴られたいのかなぁ?」
アリスは笑いながら指をばきばきと鳴らしている。
「あらあら、騒がしいと思ったら貴方達だったのね」
噂の張本人登場。小学校の中学年くらいを最後にこの駄菓子屋も護符沙汰だったが、あいかわらずメル姉さんは綺麗だった。
「カズ君、お久しぶりね」
「メル姉さんも久しぶり」
「メル姉さん!?」
俺の言葉にアリスが素っ頓狂な声を上げた。
「お母さんって、そんな風に呼ばれていたの?」
「ちょっとびっくり…」
アリスだけでなく、チルドも珍しく目を丸くしていた。娘からしたら、母親が姉さんなんて呼ばれていたら、少なからず驚くことだろう。
「そうよぉ。だって、まだまだ若いですもの」
メル姉さんの、このほんわかした喋り方もずいぶんご無沙汰だ。
「さぁ、ここで立ち話もなんだから中へ入りなさい。カズ君も今日はそのつもりで来たんでしょ?」
「え、あ、うん…」
あれ?どうしてメルさん、今日俺が来ることを知っていたんだ?アリスが事前に話していたのかな。
ともかく俺はアリス達についていくことにした。




