第20話〜一難去って〜
チルドの家――というか城?――を訪れてから三日が経った。
チルドの風邪もようやく完全回復し、再び俺達クラスメートに元気な姿を見せ、相変わらずのマイペースぶりを披露してくれた。
チルドが風邪で休んだ日に起こった出来事は、二十年経った今でも夢に出るくらいよく覚えている。変わり果てたあの二人の姿を俺は決して忘れることはしなかった。というか忘れろと言うほうが不可能だ。
チルドも学校に復帰してきたことだし、アリスも呼んでそれとなく聞いてみるか?でもなんか秘密にして欲しそうなこと言ってたし、下手に触らないほうがよい話題なのかもしれない。
よし、あの件は俺の心の中だけで閉まっておくことにしよう。
そう思っていた矢先の出来事だった。
「カズ君、ちょっといい?」
俺はアリスに呼ばれた。
以前との違いはアリスの後ろにチルドもいたことだ。手招きされるままに俺は廊下に出た。
「何?」
俺は聞いた。
「この前のことで話がある…」
チルドとアリスの表情は真剣だった。
これはやはり、ビンゴとみていいんだよな?
俺は覚悟を決めて、二人が話を切り出すのを待った。
「この前、チルド君ちに泊まったときのことなんだけど……」
話すアリスの口調はいつもの陽気な口調じゃなくて、少し重々しかった。
「もう隠し通せないと思うから大胆に言うね。カズ君、あれ見たよね?」
あれ、というのはもちろん自分達の変身した姿だろう。だから俺から尋ねた。
「なぁ、あの姿はアリスとチルドだったのか?チルドの召使いやっているおじさん達の話を盗み聞きしたんだけど、天使とか悪魔とか魔王とかって何?そもそもお前らはほんとは大人なのか?」
「レッド、質問多すぎ。質問は必ず手を上げて、一つだけ言う」
チルドがほんとにどうでもいい突っ込みを入れる。でも、確かにいっぺんに質問したって子供の姿をしたこいつらじゃ全部を一度に答えることはできないだろうな。
「はい」
俺はチルドに指摘されたとおり手を挙げてどちらかが俺を指すのを待った。
「はーい、カズ君!」
アリスがいつもの調子で俺を指名する。
「俺がこの間見た大人はアリスとチルドに間違いはありませんか?」
今思ったのだが、別に敬語にする必要はなかったんだよな。手を挙げろとか質問は一つずつとか言われると、ついつい授業中を思い出して丁寧語になっちゃうんだよな。
「そうだよ」
急にシリアスな表情でアリスが言った。
「あの姿は私達の本当の姿。アンドおじさん達の話を聞いたのならだいたいはわかったと思うけど、私は天使でチルド君は悪魔。彼はその中でも特に秀でた魔王の家系なの」
「ま、おう……?」
アリスの口から発せられた突拍子もない単語に俺は一瞬だけ我を失いそうになった。




