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第16話〜イチゴとエロ本〜

「チルド君、いる……?」

 アリスはチルドの部屋の前まで来ると控えめなノックをしてからそっと部屋の中に入ると、広い部屋のどこかにいるチルドを探した。

「いた…」

 ベッドに寝転がっているチルドの姿を見つけると、アリスはそこまで飛んでいった。



「チルド君」

「おわぁ、アリスゥ!?」

 チルドは読んでいた雑誌を慌てて枕の下に突っ込んだ。幸いアリスには気づかれていないようだ。

「そんなに驚かなくても……」

 アリスの顔が悲しみにくれていく。チルドはアリスの性格を知っているためかすぐに「悪かった」と反省の色を示した。

「今日は何の用だ?」

「チルド君、風邪をひいたって聞いたからお見舞いに来たのよ。ほら、チルド君の大好きな苺も持ってきたから」

「苺の旬は今じゃねぇ」



 刹那、二人の間に冷たい風が流れた。そして、たちまちアリスの表情が悲しみになり、その麗しい瞳から涙がこぼれそうになる。

「あぁ、俺が悪かったよ!ほんとにすみません!ありがたくいただきます!」

 チルドはそう言ってアリスから苺の入った袋をひったくると、一粒つまんで口に放り込んだ。

「うむ、少々酸っぱいが、これはこれで美味いな」

 アリスを泣かさないようにするためのお世辞ではなく、素直にそう思った。

「ほれ、アリスも食ってみ?」

「う、うん……」

 アリスは小さな指で涙を拭くと、チルドから苺の入った袋を受け取り、中の苺を一粒口の中にいれる。

「美味しい…」

 やっとアリスの顔に笑顔が訪れた。

 これで一安心――のはずだったのだが。

「チルド君、この本はもしかして……」

 アリスの視線がふとベッドの横に置いてある本棚の上に落ちる。

「げ、それは……」

 しまったと言わんばかりにチルドの顔が恐怖に歪んだ。本棚に置いてあるのは既に読み終わったエロ本だった。そう言えばそんなところにも置いたような、とチルドの短い回想劇が始まる。

「チルド君、またこんなものを読んで……」

 アリスは怒気を含んだ声で言った。

「許さない……」


 これはヤバイな。

 チルドは今のうちにベッドの下に隠してある剣に手を伸ばす。

 

 

 ガギィン!!

 


 それはほんとに一瞬の出来事だった。アリスの手にもいつの間にか剣が握られており、二つの剣が今ひしめきあっていた。

「チッ!」

 アリスは舌打ちをすると、身を引きチルドと距離をとった。

「ま、待てアリス!悪気はなかったんだ。ちょっと間が指してだな…」

「チルド君、それ言うの何度めなのよ…」

 アリスの目は文字通り釣りあがっていた。いつものように来るかと思いきや、アリスは大人しく剣を虚空に消し去った。

「もうすぐカズ君が来ると思うから、今日は勘弁してあげる」

「ふぇ?」

 チルドは安心したと同時に疑問に感じた。

「カズの奴、ここに何をしに来るんだ?そもそも迷いの森を抜けないといけないからきっと来れないと思うぞ」

「だから私が行くんじゃない。町に薬を買いに行くついでにね」

 なるほど、そういうことか。

 チルドは気が緩んだのかだらしなく肩を落とした。

「チルド君、その本はちゃんと閉まっておいてね。子供のカズ君にそんなものを見せるわけには行かないでしょ」

 先ほどまでのおどおどした口調とは違い、アリスは命令するようにそう告げると部屋を去っていった。

 誰もいない部屋の中でチルドはため息をつきながら「怖ぇ」とつぶやきながら再びエロ本を読むのに没頭した。


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