第10話〜空っぽの家〜
ひとしきり泣いた俺は、ぼろぼろになった体でチルドの家の前までやってきた。今日はもうこいつの家に泊まらせてもらおう。ここまで苦労して授業のノートと寄せ書きを持ってきたんだからそれくらいしてもらって当然である。
と、ここで気づいたことが一つ。
「チャイムがない?」
迷いの森を出てホッと一息の俺に再び起こる珍妙な出来事。
俺はしばらく口を閉じることができなかった。
「いや、チャイムがないのならドアをノックすればいいだけのことさ」
俺は気を取り直してチルドの家の扉を軽く二回ノックする。
反応がなかったのでもう一回ドアをノックするが、やはり反応がない。
チルドの奴もう寝ちゃったのかな。それにしては明かりがついているし、第一奴の親は家にいるはずだ。
いつまで経っても反応がないことに先ほどまでの怒りが湧き起こり、俺はわけのわからないことを叫びながらドアを蹴破った。ドアはみしみしみしとすごい音を立てて家の内側に倒れるが、そんなことは知ったことか。今の俺はそんな冗談を受けられるほどの体力と精神力は残っていないんだ。
俺はずかずかとチルドの家の中に入る、が――
「誰もいない?」
いや、それだけではない。どの家庭に、普通はあるだろう、ベッドや机、テーブル、そういった家具用品すら、この家には一切置かれていなかった。
「ど、どうなっているんだ?」
迷いの森で起きた目眩がまた俺を襲い始める。
今日は一体どうなっているんだ。
俺は幻でも見ているのか。はたまたこれは俺の夢で、まだ夢から覚めていないのかもしれない。だとしたら早く起きろー!今日だって学校はあるんだぞー。
俺はまた、頬をきつく叩いた。しかし、残るのは痛みだけ。俺の予想ではここらで目が覚めて朝になっていて、学校に行ったらチルドはちゃんと学校に来ているはずなんだ。それなのに…。
「これはなんなんだよー!!」
俺は力の限り叫んだ。溜まりに溜まったストレスと、行き場のない恐怖を発散させるために。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
これで少し、また落ち着いたな。
俺はチルドの家をくまなく探索してみることにした。何かチルドの備品一つくらい残っているなら後を追える。また迷いの森に入らなければいけないのは正直嫌なのだが。しかし、これがまた見事に何もなく、本当にチルドはここに住んでいるのかということすら危うくなってきた。
「もしかして住所を偽って住んでいるとか……」
俺の中にまた、しょうもない憎しみが浮かび上がった。
こんなことを考えたってしょうがないというのに。




