終幕
「で、最終的に全治何か月なの?」
「わからない。破傷風はないみたいだから退院自体はすぐだろうけど…………リハビリとか義手とかつけるかもしれないからなぁ」
左ととまりの決戦中に出血多量で倒れた僕はこの町の最大の病院に運び込まれそこから手術やら輸血やらで何とか一命を取り留めた。右腕は失ったけれど。
「ところで」
とまりは椅子に座って足をぶらぶらさせながら問いかけてくる。なぜかにやにやとしているのが気になる。嫌な予感が。
「動機とかいろいろ、理由違ったよね」
「う」
その通りだ。僕は推理全てをしっかり外していたのだ。
「まぁそのおかげで殺人犯である左中心を殺せたから結果オーライだったんだけどね」
にやにや笑いのままフォローする。
くそう。自信満々に言った自分が恥ずかしい。
「あともう一つ聞きたいのが」
今度は真剣な顔で聞いてくる。
「本当に左君の殺人理由、つまらないものだと思った?」
なんだそんなことか。
そんなもの決まっている。
「いや、なかなか面白かったよ。彼の殺人観念は非常にいい経験になった。右腕と犠牲にして釣り合いはしないけどそれなりにいいものだった」
「――――は?」
「いや言ったろう?僕は中身を殺すって。あれだけプライドを傷つけられたのなら、もう殺したも同然だろう」
「…………」
とまりは黙りこくる。
「本当はもっと時間をかけて対話の中で殺してしまいたかったけど――――体力的に無理だったし。あれで正解だったね。最後の切結びを見てもわかったけど、全然冷静じゃなかったし」
「いや…………そうだけどさぁ…………そうなんだけどさぁ…………」
微妙に納得しないような、そんな顔をしながらむくれている。
「これに手事件は一件落着、でいいだろう?」
「いいのかなぁ…………」
困惑しっぱなしのとまりに、僕は問う。少し眠くなってきた。春が近づいてきたのか。
「なぁ、とまり。僕たちが初めて会った時の君の質問。僕、なんて答えたんだっけ」
「えー?忘れたの?」
「いや、そういうわけじゃないけどもう一回君の口から聞きたくなったんだよ」
ふーん、とそっぽを向いたとまりの声音は明るい。
とまりはこちらを振り返り、春の桜のような、満開の笑顔で、言った。
「『君の全てを受け止めよう』、よ」
GOOD END?