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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生トラックの中の人

作者: 月狩朔夜

 彼は、刑務所から出てきた。

 交通事故を引き起こしたのだ。

 それも一件や二件ではない。此度で計十三件目。運転するくらいしか能の無い彼はもうまともな職に就くことはできないかもしれない。これまで雇ってくれていた所からも「これ以上事故するならクビ」とありがたい宣言を貰っていた。

 一応弁護しておくなら、彼に非は無かった。ただ、相手の方から信号を無視して道に飛び出してきたり、謀殺(はか)られて飛び出してきた少女……を護るためにトラックの前に飛び込んできた代わり身になった少年、etcetc……。少なくとも、居眠り運転も飲酒運転もしていない。タバコは吸うがそれは運転には関係ない。

 しかし、自転車で真っ正面から少年が突っ込んできた時、運悪く誰も見ていなかった為証人が居なかったのだ。そうして、犯罪者になった彼は過去の事故も取り上げられ、実に三十年もの期間を刑務所で暮らしていた。二十歳があっという間に五十過ぎの無職のオッサンである。

「もう来んなよ」

 来たくて来た訳じゃない、という言葉は飲み込んだ。


 だから、改めて日の光の当たるところに帰ってきた彼には、しかし、何も無かった。刑務所にいる間に家族は一家心中をしたらしい。風の噂では、マスコミが彼の事を面白おかしくはやしたて、それによって地域から孤立。毎日される嫌がらせに嫌気がさしたかららしい。

 職も金も帰る家も何一つ残っていない、手に入れる宛もなくなった彼には、もはや現代で生きていく術など無かった。だからだろう、今までされた様にふらふらと車道に入り、トラックに――轢かれた。



 そうして彼は、気付いた。

 彼は今、赤ん坊として、新たなる生を受けていた。

 新しい親兄弟に囲まれ彼は、しかし、両親の会話を聞いて怯えていた。新しい父親が彼が轢き殺してしまった少年の面影を残しているだけなら百歩譲って見なかったことにしようと思っていた。が、名前まで、例の少年と同じとなると見逃せない。

 彼は気付いてしまった。

 即ち、彼は昔轢き殺した少年の子供になったのだ、と。

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