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好きな人にお弁当食べてもらっちゃった

「あ、お弁当持っていくの忘れてた!」

「取りに帰れば?」

 私、正留水面が幼馴染で片想いの相手である葵愛生と学校へ向かう途中、愛生はお弁当を持ってくるのを忘れたことに気づく。


「今から取りに帰ったら遅刻しちゃうよ、俺こう見えて皆勤賞狙ってるんだ」

「ふーん」

 確かに昔からこいつが休んだり遅刻したところを見たことがない、意外と生真面目なのね。


「おはようございます、葵さんと…えーと…」

 と、ここで愛生の片想いの相手である奏加奈子さんと出くわす。

「…正留水面よ」

「す、すいません。人の名前覚えるの苦手で」

 恋のライバルは私なんて眼中にないようだ。


「ところで奏さんは確かお弁当だよね?」

「は、はい。実は毎日自分で作っているんですよ?」

「ええ!?じ、自分でお弁当作る人なんて水面以外にいないと思っていたのに」

 男はともかく、女の子なら結構自分で作る人もいるとは思うが、これは男と女の考えの違いだろう。



「へえ、正留さんもお弁当自分で作るんですか?料理好きなんですか?」

 上の名前で呼ばれると少しばかりイライラしてしまうが、そんなことでキレる程ガキではない。

 それに奏さんのキラキラした目を見ていると怒る気にもなれない、なんて純粋な子なのか。

「…まあ、練習がてらね」

「そうなんですか、楽しいですよねお料理♪」



 そして学校に到着し、いつものように授業を受ける。

 私は授業中まで愛生を眺める程末期ではない。

 4時間目の授業は別の教室で行われたのだけど、授業が終わるや否や愛生はすぐに飛び出していった。

 何か嫌な予感がする。



 自分の教室に戻り、お弁当を食べようとしたところで、

「あ、あれ?私のお弁当…おかしいな、家に忘れてきちゃったのかな…」

 という奏さんの声が聞こえた。ああ、またやらかしたのか、あいつは。



 やましいことをするときは、人のいない場所で。

 空き教室をしらみつぶしに探していると、案の定その1つに愛生がいた。

 机には可愛らしいお弁当を広げている。

 私に気づいていないようなので忍び寄り、愛生が座っている机に自分もお弁当を置く。

 まだ気づいていないのかこいつは、相手にされていないというのは悲しいわね。


「はぁ…あんたねえ、流石の私も見過ごそうか迷うわ」

「うおっ!?み、水面か」

「やるならやるでちゃんと鍵をかけておきなさいよ。ここたまにカップルが使うのよ」

 何を言っているんだ私は。恋のライバルのお弁当を盗んで食べている男にやるならうまくやれなんて。

 靴を隠した後きちんと探して返したし、傘も翌日にはちゃんと返した。

 しかしお弁当は返すことができない、段々こいつの行動がエスカレートしている。

 そろそろ止めさせなければいけないのだろうか?



「しかしまあよくここがわかったね」

「奏さんがお弁当がないない言うからまさかと思って探してみれば、案の定よ」

「頼むよ、好きな子のお弁当を食べたいって気持ちわかるだろ?」

 男はそうかもしれないが、女は逆なのだ。好きな人に手作りお弁当を食べさせたい。

 私が毎日お弁当を作って料理の練習をしている理由の1つね、甲斐甲斐しいでしょう?



「はいはい。で、その好きな子のお弁当は美味しい?」

「美味しいけどちょっと物足りないなあ、男の俺には」

「盗人猛々しいにも程があるわよ、まったく…」

「水面のお弁当もちょっと分けてよ」

 私の顔が赤くなっていくのがわかる。どうしてこいつはそんな事を平然と言えるのか。

 人の気持ちも知らずに。今日だって、お弁当を忘れたと聞いてわけてあげようかな、でも恥ずかしいなとかガラにもなく乙女チックな事を考えていたというのに、こいつは。


「あ、あんたねえ…ああもう、好きにしなさいよ」

 半分くらい残ったお弁当を無理矢理愛生に寄越すと、ピシャンとドアを叩きつけるように閉めてその場を立ち去る。顔からは湯気が出ている。



 おいしく食べてもらえたかな?

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