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好きな人が失恋しちゃった

「?葵さんじゃありませんよ?久我君に、告白しようと思うんです」

 始業式の2日前、告白しようと思うんですと奏さんが私に相談してきたのでてっきり愛生の事かと思ったら、なんと久我君らしい。



「く、久我君?」

「はい、久我君、陰ながら色々私を助けてくれたんですよね。その、なんていうか、爽やかそうな感じで、いいなあって前から思ってたんです」

 …何てことだ、あれほど全面的に奏さんを守った愛生よりも、影でこそこそっと守った久我君の方が好感度が高いなんて。愛生のこれまでの頑張りは何だったのだろうか。



「で、でも、愛生はあなたのために」

 愛生は奏さんのために頑張ったのだ、何とか奏さんに愛生を売り込もうとするも、

「?葵さんは確かに優しくしてくれましたけど…そもそも正留さんって、葵さんの事好きですよね?正留さんの男を取るような真似はできませんよ」

 奏さんはそう言うのだ。



 私は愛生の事なんてなんとも思ってない、久我君に告白するよりは愛生に告白した方がいい、とあの手この手で奏さんを説得することもできただろう。だけど私はそれをしなかった。できなかった。

「そ、そう。か、奏さんなら、きっとOKもらえるわ。頑張ってね」

 私はそう言うしかなかった。



 翌日。今日奏さんは久我君に告白するつもりらしい。

 そうとも知らずに愛生は、明日奏さんに告白するぞ、と意気込んでいた。

 私は愛生の顔を見ることができなかった。



 そして更に翌日の終業式。

「私達、付き合うことになりました」

 終業式の日、クラスメイトの前で奏さんと久我君がそう発表する。

 皆それを拍手で祝福する。私は拍手ができなかった。愛生の方を見ると、彼もまた拍手をすることができずにいた。そしてすぐに愛生はトイレへと駆け込む。心配になった私がトイレの近くまで行くと、中から嘔吐の音が聞こえた。



「なあ、俺の1年って、何だったんだろうな」

 放課後、私と愛生は共に学校を出る。奏さんと久我君は早速デートに行くらしい。

 愛生がうつむいてそう私に問いかけるが、私は何も返すことができない。

 愛生の顔を見ることが、やっぱりできなかった。

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