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好きな人が他人の傘をくれたらどうする?

 私の名前は正留水面。幼馴染に恋心を抱く高校一年生の女の子。

 けれどもその幼馴染、葵愛生はクラスメイトの奏加奈子さんにご執着。

 彼女の信頼を得るために、靴を隠して一緒に探すという自作自演までやらかすような男だけど、

 まあそれでも好きなのよ。



 その一件から二人の距離は狭まったようね。

 今まではあいつが奏さんに近づいても逃げられていたけど、

 挨拶をかわせるようにはなっていたし、微笑ましいわね。



 もし私が奏さんに、靴を隠したのは実は愛生だと伝えたらどうなるのかしら。

 可愛らしい目を精一杯こちらに向けて、「葵さんがそんなことするはずありません!」

 とでも言うのかしら。

 まあ、そんなことしないけれどね。

 別に愛生が奏さんに嫌われて立ち直れない所を慰めて、自分の恋を成就させようだなんて、

 これっぽっちも思っていないのよ。



 さて、今日の授業も終わって帰ろうと思ったのだけど、気づけば外はどしゃぶり。

 午前はあんなに晴れていたというのに、やっぱり天気予報はちゃんと見ないとダメね。

 さて、確か生徒会がこういう時のために傘の貸し出しをしてたわよね、ほとんどの生徒は知らないけれど。


「やあ水面、どうかしたのかい」

 私に声をかけるのは片想いの相手である葵愛生その人。

「…天気予報をちゃんと見ておくべきだったわ」

 つられて愛生も外を見て、ようやく大雨が降っているということに気づく。


 愛生は生徒会に傘を借りに行こうとした私を引きとめ、傘立てから一本の傘を取り出して私に手渡す。

 可愛らしいデザインの傘、どう考えてもこいつの傘ではない。

 長年の経験からこいつの考えていることが理解できたというのが悲しいものだ。


「これ使って帰りなよ」

「…あんた、その傘」

「帰りなよ、傘がないんだろう?濡れると風邪ひくよ」

「……」

 何で私はときめいているのだろうか、馬鹿なのだろうか。これは他人の傘よ?

 先輩からもらった自転車が実は盗品でした、で警察に捕まる人も多いのよ?

 やっぱり私は馬鹿みたい、頭の悪い高校に入ったのも必然なのか。

 愛生から傘を受け取ると私は学校を出る。



 真っ直ぐ家には帰らず、途中のT字路で私は電柱に隠れる。

 奏さんはここのT字路を右に帰り、私や愛生は左に帰る。

 やがて二人がT字路へとやってきた。相合傘で楽しそうね。

 家まで送っていくという愛生の提案を迷惑はかけられないと断る奏さん。

 すると愛生は自分の傘を手渡す。自分は濡れてもいいからと。

 愛生は奏さんの姿が見えなくなるのを確認して満足そうだ。

 雨は一層激しくなる。私はそっと自分の傘(本当は奏さんのだけどね)にあいつを入れてやった。



 ホントに馬鹿よね、私って。恋は盲目ってこういう事を言うのかしら?



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