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好きな人からデート誘われたわ

 夏休みが始まった。

 恋愛もので夏休みと言えば男の子とプールや海にいったり合宿をしたりと最高のイベントだが、

 現実はそんなものはない。…と思っていたけど、私、正留水面の弟である正留水瀬はアルバイトで仕えているお嬢様の避暑についていく形で外国へ行っているわ。何なのもう。



 私が好きな幼馴染、葵愛生は家が隣だし、本人も恋する奏さんを誘う勇気がなくて暇そうにしているし、私も勇気を出すべきなのかしらと悩んでいると、その愛生が私の家を訪ねてきて、

「デートしよう」

 と言ってのける。

 まあ、長年付き合いのある幼馴染だ、考えていることは分かる。

「…どこへ行くの」

「随分あっさりと受け入れるんだね」

「どうせデートの予行演習だとか、夏休み何もしないのはちょっと寂しいからとかそんな思い付きでしょ」

 こいつにとって私は所詮都合のいい女だ。それでも頼りにされると喜んでしまうのだから馬鹿ね。

「どこに行くかとか決めてないんだよね、どこか行きたいとこある?」

「…今日は映画を見に行くつもりだったのよ、恋愛もので愛生好みじゃないと思うけど、一緒に見に行く?」

「オーケー、恋愛ものの映画を見るなんてデートっぽいじゃないか、十分予行演習になる」

「それじゃあ私は準備してくるから。30分後に迎えにいくわ」



 服を着替えて、身だしなみもチェックして、香水なんかも使ってみちゃったりして、

 きっちり30分後に隣の家に迎えに行く。

「おまたせ」

「あれ、さっきみたいな可愛い服じゃないの?」

 指摘された通り、訪ねてきた時に来ていた少女趣味の服ではなく、無地シャツ、ジャケット、ジーパンという普通の服装だ。色々悩んだ結果これにした。

「…似合わないの自分でもわかってるから。家で着れればいいの」

「だからって俺とあまり変わらないじゃないか…」

「可愛い服が見たいなら奏さんにでも頼むことね」

 似合わないのもあるが、愛生の服装と似ているからというのもあった。



 駅について、電車に乗って、市内の駅につき、映画館に到着。

 ほとんど一緒に登下校しているがそれほど喋らない私達は、デートでもやはりあまり喋らない。

 でも私はそれで満足、デート(向こうからすれば予行演習だが)だという事実だけでいい。

 周りの人はペアルックだと笑っている。

 ああ、奏さんが田舎に行っているのが残念だ。見せつけてやりたい。

 愛生は私のものよこの泥棒猫と言いたい。

「この映画を、見ようと思って。前作があるけど、多分今作だけ見ても大丈夫と思うわ」

 そう言って私が指差したのは、『アナウンスせよ!放送部』のポスター。

 4月に、『応答せよ!アマチュア無線部』という映画を見たのだがなかなか面白かったので、

 原作は知らないけど続編も見てみようと思ったわけだ。

「わかった、丁度後10分で上映だね。チケット買ってくるよ」

「私の分は私で払うわ」

 私の分もチケットを買おうと売り場に向かう愛生を制止する。

「え、奢らせてよ。デートなんだし」

「デートでもなんでも自分の分は自分で払いたいのよ、大体奢るとか言う前にこの間借りたお金返しなさい」

 あまり男に奢らせる女というのは好きじゃない。



 映画の内容は前作でアマチュア無線部と合併した放送部を舞台にしたラブコメだが、

 前作の主人公とヒロインがあまり出てこないので幽霊部員としか思えない。

 また内容も一人の男に4人の女がアプローチするも気づかないというハーレム物で、女の私にはあまり好きになれない内容だった。



「すごくつまらなかったね、主人公が鈍感すぎていらいらしたよ」

 映画を見終えた後、近くの喫茶店で軽食をとる。愛生は宇治金時を食べながら映画を酷評しだす。

 まあ、実際私も好きになれなかった。

「…実際のデートじゃ嘘でもいいから面白かったよって言う事ね、今日みたいに女の子に誘われてみた映画を貶すなんて、相手のセンスを否定してるようなものよ」

 けど一応デートなのだ、予行演習とは言えどそれくらいのデリカシーは持ってほしい、というのは私の身勝手なわがままなのだろうか。



「んじゃ、映画も見たし帰ろうか」

 喫茶店を出た後、愛生はそう言った。

「…そうね」

 デートで映画見ておしまいなんていくらなんでも短すぎる。まだ午後1時だ。

 まあ、映画も私とのデートもつまらないからもう帰りたいという愛生の意思表示なのだろう、私はそれに従う。



「それじゃ、また」

 愛生がそう言って自分の家に戻ろうとしてしまう。

 いいのか、彼をこのまま帰して。折角デートに誘ってもらって、でも消化不良で。



「…来週、夏祭り一緒に行かない?」

 私は勇気を出して、自らデートに誘うことにした。


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