好きな人が靴を隠してても好きなのよ
「好きな子って苛めたくなるよね」の別視点です。
なるべくストーリーの時系列が同じになるように更新したいと思ってますが、やはりかなり不安定な連載になると思います。
私の名前は正留水面。どこにでもいる高校一年生の女の子よ。
正直名字がコンプレックスだけど、名前ならともかく名字に文句はつけられないわよね。
小さい頃から女なのにマサルだのからかわれたりしたわ、もう慣れたけどね。
ああ、そんなことはどうでもいいのよ。
私には幼馴染がいてね、葵愛生というこれまたヘンテコな名前なのだけど。
家が隣でね、小さい頃はいつも一緒に遊んでいたわ。
中学の3年くらいかしら、私が彼を好きだってことを認識したのは。
恋心に気づいても別に何も変わらない。
長年一緒にいたのだ、彼の好みのタイプなどわかっている。
彼は小さくてか弱い女の子が好きなのだ。
私は小さくもないしか弱い女の子でもない。どちらかというと身長は高い方だし、親の意向で武道も嗜んでいる。だから好きと言う気持ちを彼に伝えるわけでもなく、幼馴染という関係のままでいることにしたわ。
そして私達は高校生に。偏差値は低いけれど家から近い高校へ二人とも進学したわ。
別にレベルの低い高校だろうと、本人の意思さえあれば学力はつくと思っているから。
何の因果か私達は同じクラスになった。そしてそのクラスにはとある少女がいた。
奏加奈子。一目見た瞬間、この子は愛生のドストライクだって理解したわ。
小柄な体、クリクリとした瞳、気弱で人が近づくと逃げてしまう警戒心。
愛生の庇護欲をかきたてるには十分でしょうね。入学して数日、あいつは彼女の事ばかり見ていたわ。
まるでストーカー、そのうちやらかすんじゃないかと思っていた。
だからあいつが奏さんの靴を隠している所を見ても、特に衝撃は受けなかったの。
少しは幻滅したけれど、ああ、こいつならやるだろうなとも心の中で思っていたから。
自分で靴を隠して、困る奏さんに一緒に探すよと言って、靴を探し当てて、好感度を得る。
その考えは理解できる。道徳的には間違っているが、理解はできる。
だから邪魔をするつもりはなかったし、寧ろ応援しようと思った。
そしてこれを機にあいつへの恋心を無くそうと思った。
あいつは平気でああいうことをする男なんだと自分に言い聞かせる。
だけど駄目ね、一度根付いた恋心はちょっとのことじゃ揺るがないみたい。
一体どうなるのかしらね、この三角関係は。