5.衝撃の事実
「なんで言わなかったんだよぉ!!」
神城さんが帰宅した午後4時。俺は玄関で神城さんに怒鳴った。
「だって、言ったらつまんないじゃんか」
へらへら笑って誤魔化す神城さん。別に怒ってる訳では無いが、神城さんを睨んでみせる。
「祐樹が俺の仕事を聞いてきたら、言うつもりだったんだけど」
俺の頭を撫でながら靴を脱ぎ、家に上がる。俺は大人しく神城さんについていく。
「なんか悔しい……神城さんの馬鹿」
憎まれ口をたたく。神城さんはくるりと振り向いて俺の口に人差し指をあてた。
「『先生』な。神城さんじゃなくて」
意地悪く笑う。
「はぁ?なんで?家では神城さんでいいでしょ?」
まさか家でも先生なんて呼んでたら学校にいる気分じゃないか。
「だーめ。命令な」
ますます意地悪くわらう神城さん。こうなったらきかないからな…。そんなところが子供らしい。
「………………わかったよ、『先生』」
そう呼ぶと、『先生』は目を糸のように細めて笑った。そして頭をくしゃくしゃ撫でる。
「良くできました。花丸」
先生口調にほんのちょーっぴり嬉しかったり。
「ところで神城……じゃなくて先生はなんの教科担当なの?」
スーツのジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めて、いかにも疲れてますオーラの先生。ソファーに座って溜め息をついている。
「ん、数学。イタリア語は副」
そう、S高には他の学校にはない『イタリア語の授業』がある。
「嘘っまじで!?」
日本以外の国の言語がからっきしの俺にはとてもありがたかった。いつでも教えてもらえるっ♪
「…つか副ってなに?先生は2つも教科持ってるわけ?」
しかも本職(?)は数学だし。
「そう。たまにイタリア語で入るときある」
「ふぅーん。イタリア語とか、先生かっけぇ!」
「だろ」
にぃぃ、といたずらっぽく笑う。子供っぽくで可愛いと思ってしまった。
ぽん、と先生は俺の頭に手を置いた。
「ちゃんと勉強するんだぞ?」
「わかってるよ!」
ならいいけどね、なんて言いながら先生は部屋にいき、スーツを脱ぎ始める。くそ…憎たらしいな。