1.新居にて
この回から本題とかいってたけど
まだっぽいねw
次かなー…w
埃っぽい手をパンパン、と二回叩く。目に見えて、埃が舞う。
「これで全部だ」
兄ちゃんのアパートに引っ越し完了。
「祐樹、終わった?」
部屋をひょいと覗いたのは、兄の俊明だった。さっきまで出掛けていて居なかったのだが。
「兄ちゃん!終わったよ!ありがとな」
兄ちゃんはふにゃりと笑って「おー」なんて言いながら去った。
片付いた部屋を後にし、兄ちゃんの部屋を覗く。兄ちゃんは着替えていた。薄水色のワイシャツに青のネクタイ、ピシッとスーツを着こなしている。
「仕事か?」
「そう、これからなんだ」
眼鏡を外してコンタクトをつける。個人的には、兄ちゃんは眼鏡が似合う。
よし、と一言、兄ちゃんは鏡から離れ俺の前に来た。
「悪いな、明日の朝まで帰れないんだ。晩飯、一人で食えるよな?」
ぽん、と頭に手をのせられる。いつまでも子供扱い…なんだけど、俺は兄ちゃんの手が好きだから構わない。
「大丈夫だ、心配すんなっ」
「ん、いいこだ」
くしゃくしゃと髪を乱される。俺はされるがままだった。
「じゃ、行くな。寝るときは鍵確認しろよ」
忙しなく、兄ちゃんは出ていった。家に取り残される。…なんだか寂しい。
「あー、退屈だ」
自室に戻り、ベットに倒れ込む。天井の木目をぼんやり眺めた。
引っ越しやなんやらで疲れていた俺は、うとうと微睡みかけていた……。
プルルルル…
プルルルル……
「ぅわっ!」
無人の家に鳴り響く電話のコールに俺は起こされた。慌ててリビングにある電話の受話器を取る。
「もっもしもし!」
『あ…あれ?俊明…じゃないよな。だれ?』
聞き覚えのない、男性の声。
「あ、えと、にいちゃ…俊明の弟です」
『弟?そう。俊明は?』
「仕事です」
ふぅん、と興味無さげに返事をする男。向こうも無言、俺も無言。重い空気…。
切ろうかなぁなんて考えはじめた俺に、男が声をかけてきた。
『君名前は?』
見知らぬ人に名乗っていいのか迷ったが、よく考えたら兄ちゃんの知り合いか。
「祐樹、です」
『ユウキ君か。今いくつ?』
「15歳です。4月からS高生です」
『S高?………へぇ』
男は意味有り気に笑った。
『まぁいいや。俊明帰ってきたら〈神城から電話あったよ〉って伝えといてくれるかな』
神城…恐らくこいつの名前。
「わかりました神城さん」
じゃあ、とお互いに挨拶を交わしたあと受話器を置いた。
俺はやはり疲れていたので、晩飯を軽く済ませ、さっさと眠りについた。