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序章
思い出…いつの日か、失くしてしまうもの。
そう思っていた。でも違ったんだ。本当の思い出は、思い出泥棒に盗まれるまで、いつまでも心の中に光のように眩く輝き続けているんだ。
そう、言っていたあの人が亡くなったのはいつのことだろうか。
私に残してくれたのは、いくばくかの思い出とたった一つのシルバーリングだけだ。ほんとのことを言うと、私にとってはあの人とのすべてが思い出だけど、中には思い出したくないことや思い出せないこともある。だから、本当の思い出は少しだけ…いつでもどこでも思い出せるものだけでいい。
さて、何から話そうかな。
ああ、どれなんてない、全部話せばいいと思う。
私とあの人が離れ離れになってしまう話。