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『異世界アンチノミー ――翼神の箱庭――』  作者: めざしと豚汁


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93/116

93.ジェイの誇り

馬車は街道を逸れて農道に入り、小さな集落に行き着いた。

ギャレが「食料を調達してくる」と言い、サギタを連れて交渉に向かった。


――トーチたちに話すなら今だ。


「ちょっと話がある」


集落から火をもらい焚き火を起こし、皆を集めた。

俺は“再生者”であること以外の真相を隠さず話した。


「とんでもねえな」


「このまま村に戻って大丈夫かよ」


ロガとジェイは無表情のまま焚き火を見つめて言った。


「あの小男は信用できるのか?」


「帰るまでは裏切る要素はないと判断したよ」


「分かった」


「危なくなったら俺たちを捨てて村に戻ってくれ。公爵の狙いは俺たちだ」


ジェイが空を見上げ、長く息を吐いた。


「俺たちはトーチを村に返さなきゃならねえ。家族が居るからな。

だが、俺は護衛を受けた以上はやりきる」


「巻き込んで本当に申し訳ない」


「全くだ。だが俺とかみさんで決めたことさ」


トーチが俺の肩を揉みながら笑った。


---


「よし、まずは村を目指す。街道は使えないが、何かアテはあるか?」


ロガが口を開いた。


「幸い今年は雪は少ないし方角は分かる。

だが、逃げ回りながら低い山をいくつか越えるとなると馬は捨てなきゃならんし、時間はかかる。

ここで目一杯食料を担いだとして保つかどうかだ」


トーチもジェイも別の案はなく、俺を見る。


「ハイズマン様はそれでいいか?」


「了解だ。リッカ、動きやすい服に換えよう」


「分かった」


それが号令になり、トーチたちは周辺の警戒に散った。


---


ギャレとサギタが鞄を背負って戻り、

トーチも「追っ手はいない」と報告した。


哨戒から戻ったロガとジェイは短い鉄槍を手にしていた。

継手式で鞄に入れていたらしい。


「ちと頼りないが、こいつは鎧も抜けるぜ」


「ようやく護衛らしくなれたぜ」


二人は自慢げに俺を励ました。


トーチが陣形を伝える。


「俺が先行する。二人は離れず馬車を守れ。

ただし後ろは警戒しろ。優先順位はリッカ、カゾヤマ、自分だ」


俺はギャレに確認した。


「俺たち任せでいいか?」


「宿場を迂回してアズィ様の領地に入れるのであれば、お任せします」


ロガも確認する。


「途中で馬車は捨てなきゃならねえが、いいな?」


「やむを得ませんね」


この時代の道は目的が明確だ。

議員の利権や気まぐれで道が拓かれることはなく、

トーチたちは長年の経験と勘で独自のルートを考える。

従うのが最適だとギャレは判断したのだろう。


サギタが食糧の袋を馬車に積み、

俺とリッカは余計な荷物を藪に捨てて集落を出発した。


---


三時間ほどは追っ手も検問もなく、

どこに続くか分からない街道を進んだ。


馬車の中は静かだった。

俺もリッカも、息をひそめる方が安心だったのかもしれない。


「大丈夫か?」


「ええ、少し寒いだけ」


俺はリッカに寄り添いながら、

最悪の局面に至ったら力を使うと覚悟を固めようとしていた。


---


先行していたトーチが戻ってきて叫んだ。


「まだ遠いが、騎士が二騎見えた!」


並走していたロガが応じる。


「馬車を停めろ!」


馬車が止まり、ギャレは俺たちに降りるよう言って馬を外し始めた。


「街道から外れましょう。馬には乗れますか?」


「一応」


「ではお二人はこちらを」


「なら、あんたとそいつは俺とジェイが」


「お願いします」


周囲を見回っていたトーチが戻ってきた。


「あの木立ちを進む。開けたとこは不利だ。先行する」


そう告げて走り出すトーチ。

リッカが馬にまたがり、俺に手を伸ばした。


「馬ならきっとあたしの方が慣れてる」


お遊戯会で王子様役になれなかった記憶がよぎったが、

今はそんなことを言っていられない。

俺は馬に乗り、リッカの腰に手を回して出発した。


---


木立ちはまばらで馬は通れるが、走るには無理がある。

俺たちの隊列はトーチを先頭にゆっくりと進んだ。


「やつら、報告に戻るか追ってくるか」


「待ち伏せしようにも数が分からねえから、今は逃げの一手だ」


ロガとジェイの会話を聞きながら、

何か手はないかと考えたが、

彼らはあらゆる面でプロだ。

口を挟むのはやめた。


一時間ほど経っただろうか。

追ってくる様子はなく、

俺たちは小さな川に行き当たったところで馬を休ませることにした。


「少し考える」


トーチは馬を休ませ、下流へ歩いていった。


---

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