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『異世界アンチノミー ――翼神の箱庭――』  作者: めざしと豚汁


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92/116

92.敵か味方か

俺が話し終えると、ギャレはしばし考え、


「困ったな。ヤマノが、そうですか」


と低く漏らした。表情は険しい。

俺はアズィの真似をして、あえて直球を投げる。


「俺は、あんたの仕組んだことだと疑っている。

返答次第では、あんたとサギタを置いて逃げる」


「なるほど。それは誤解ですから、ご納得いくまでお話しましょう」


ギャレがチラッとトーチたちに目を向けた。

俺は軽く首を振って“大丈夫”と合図する。

トーチはロガとジェイを周辺の偵察に出し、自分は馬車に戻ったリッカの警護に立った。

本当に優秀な護衛だ。

サギタは……遠くの茂みを漁っている。


「さて、ご質問には何でもお答えします」


「ヤマノはお前の差し金か?」


「違います。そんなことをしてどうなるんですか?」


「分からないが、公爵側に寝返ったとか?」


「ああ、それはありません。私も王の目ですから」


やっぱりか。


「アズィの忠誠心は知ってるが、俺はあんたをよく知らない」


「なるほど。あなたの推理はこうですね?

“私がアズィ様を嵌めて、あなた方を手土産に公爵様に仕える”と」


「仕えるかどうかは知らん。だが、貸し借りを作ってうまくやろうってこともある」


「それなら私は護衛をつけていますよ。芝居にしたって御者もつけない道理はありません」


「付けなかった理由はなんなんだ?」


「居なかったのです。詰所には誰も」


「は?」


「恐らく公爵様の手配でしょう。私は異常を悟り、自ら馬車を出したまでです。

捕まらなかったのは、先ほどあなたが話したように“郊外へ出させるため”でしょうね」


筋は通っている。

だが決め手に欠ける。

……それは俺も同じだ。


「そうか。それで俺たちが捕まったらどうなる?」


「あなたはイセカイジンとして永久に地下牢。

リッカ様以外は口封じで即処刑されるでしょう」


「アズィはどうなる?」


「公爵様は“不正”を理由にアズィ様の領地に軍を差し向け、賠償を請求なさるでしょう。

返答次第では戦になります。通常は戦力差から反抗は考えられませんが……アズィ様は計りかねます」


ギャレはアズィをよく分かっている。


「王様はアズィを切り捨てるのか?」


「王は公爵様の気の済むようになさるでしょうが、ご自身の派閥にある侯爵家はお守りになると思います。

具体的には“アズィ様の独断”として領主様にアズィ様の追放を命じ、賠償金の支払いで収めるよう仲裁なさると思います」


「だったら、あんたはアズィに配慮は不要だ。

俺たちをこのまま公爵に差し出して見てるだけで済む話だろう」


「そう簡単ではありません。

私が真っ先に思ったのは、公爵様が私を“見せしめに処刑”なさるのではということです。

王への牽制として」


「これからは王の目の好き勝手はさせないぞ、ってことか」


「はい。私は処刑よりも“王の立場を悪くすること”を怖れています。

ですから、公爵様に取り入るなど微塵も考えておりません」


俺は窮地に立たされたらギャレが寝返ると踏んでいたが、

公爵が“王の目を処刑して王を揺さぶる”という発想はなかった。


「……あんたがどうにか公爵領を脱出して雲隠れしなくちゃならないのは分かった。

それで今の状況だが、すぐに追っ手がかからないのはどう思う?」


「街道を塞いで我々を捕らえる自信がおありなのでしょう。

仮に逃げおおせたところで、ヤマノという切り札を出されればアズィ様は無視できません」


「アズィの元に向かうべきだろうか……」


「分かりかねます。ただ、現状ではどこへ逃げるにしても“アズィ様の領地”を目指す以外ないでしょうね」


地理はよく分からない。

隣国への再渡航は不可能。

雪の心配から方角頼みの放浪も無理。

今はトーチやロガの土地勘を頼り、一旦戻るしかなさそうだ。


「……あんたはどうしたい?」


「できればサギタを預けて逃げ出したいのですが、

逃げる方角が同じなら行動を共にする方が合理的です」


合理的。

その一言で、俺はギャレを信用することにした。


「よし、仲間に話す。

だが、ここは見晴らしが良すぎる。しばらく移動しよう」


「分かりました。サギタ!置いていきますよ!」


サギタが慌てて走ってくる。


俺はトーチに「事件に巻き込まれている」とだけ伝え、

進路と背後の警戒を頼んで馬車に乗った。


リッカはまた、不安げな顔で聞いてきた。


「どうなったの?」


「ギャレたちと、全力で逃げる」


「分かったわ」


この物わかりの良さだけは……合理的ではないと思いたかった。


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