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『異世界アンチノミー ――翼神の箱庭――』  作者: めざしと豚汁


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89/116

89.姿だけ変えても

「悪い悪い。久しぶりにあっちの人と話したから気が緩んで調子乗った」


茶を啜りながらまた肩を震わせるサギタに、


「そんな機能あるなら姿変えて逃げたら良かっただけでは?」


「それ。考えたんだけど、身分証が意外と厄介なのよ、アナログ世界のくせに」


「どういうことだ?」


「あんたがどう取り入って身分を手に入れたか知らんけど、まず“貴族か役付き警吏の保証”がないと身分証は作れない。オケ?」


「ああ。一般人はどうしてるんだ?」


「庶民は出身地で“住民の面通し”すると、1年有効の身分証を役人が発行してくれる。期限が切れたら地元の面通しからやり直し」


「面通しって、毎年地元に帰って幼馴染がチェックするイメージか?」


「それ。アナログ社会ヤバすぎ。殺して盗んでなりすましを繰り返すやつも結構いるらしいけど、俺は無理」


タルガンみたいなのがいくらでもいるのか…


「要は、人相だけ変えても新しい身分証がなくてすぐ詰むってこと。だから今回貴族の保護を選んだわけだ。オケ丸?」


「出身地のない俺たちはどうすりゃいいんだ?」


「緩い村か街の情に縋って認められたら、出身地にしてくれる。放浪者はそうやって根を張り、信用作ってからじゃないと身分証は作れねえ。俺も最初はそれだよ」


「なるほどな。仕組みは分かったし、お前の動機も分かったよ」


「で、保護されても監禁されたり拷問はないんだろうな?」


めんどくさいやつだから、一撃必殺で返す。


「ちなみに俺は今、貴族の娘とガチの新婚旅行中だ」


「偽装だろ?」


「後で死ぬほど見せつけてやる」


「あー、うん。ウザいから信用するわ」


コノヤロー。


「お前のためにどんだけ手間と金掛かったか分かってねえだろ?」


「いやいや、ここ見りゃ分かるっしょ普通」


「普通はもういいわ、お前はヤク作って売りさばいてたのか?」


「そうだよ?違法じゃないもん」


「その結果が今だろが」


「あー、キツイっすよその言い方。俺も生きるの必死だったんだってば」


「能力で作ってんのか?」


「そっすね。材料があればちょちょっと」


「まあ、それは保護された先から聞かれたら答えりゃいいわ」


「よろしく頼んまーす」


---


ひたすら喋り倒すサギタを押しのけてギャレを呼び、

俺の仕事が終わったことを告げた。


ギャレは、サギタにリッカを会わせておきたいと言い、

リッカを待つことになった。


サギタはクルージングツアーのどこかで身代わりと入れ替わったらしく、

「どこで変わったか当ててみろ」としつこく絡んできたが、

さっぱり当たらず、またしてもサギタの爆笑に付き合う羽目になった。


「リッカ早く戻らないかなぁ」


---

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