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『異世界アンチノミー ――翼神の箱庭――』  作者: めざしと豚汁


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88/116

88.サギタ

ロガの賭けの連敗は止まらず初日を終え、

2日目は庭で開催される弓の大会に参加した。

俺とトーチ以外、銀貨1枚の出場料を払い、貴族部門と使用人部門で当然のように優勝と準優勝を勝ち取った。

歴戦の狩人にしてみればスポーツハンティング勢に負けるわけがなく、俺は異世界チートライフ(他力本願)を堪能した。


「私は銀リスの帽子をもらえたわ」


ベールのついた毛皮の帽子を被ったリッカがくるくると回る。

ジェイはロガに負けて悔しそうだったが、高価そうな蒸溜酒の瓶を抱えていた。

ロガも瓶のワインを選び、誇らしげに俺を見ている。

値段を知ったら泡吹くだろうな。


---


3日目は全員でクルージングに参加し、初めて氷河を見て触れた。

上陸先のログハウスのレストランで食事を摂り、土産店でリッカに水晶の入った銀のペンダントを買った。


「もう帰りたくない。でも破産しちゃう」


ホテルの部屋のベッドでペンダントを眺めているリッカを横目に、俺が茶を飲んでいるとギャレが来た。


「明日の朝、リッカ様にオイルマッサージをご用意いたしました。明朝ロビーでお待ちしております」


そう言ってスマートに去るギャレは何者なのか。

そういえば王の目の証拠の件を忘れていた。

ここは恐ろしい場所だ。

リッカを見て、もう一つの忘れもの――俺の力の告白は、どう考えてもタイミングが悪いのでその夜は話題にしなかった。


---


4日目の朝、約束通りロビーに行き、リッカはサウナ&オイルマッサージに向かった。


「それで、リッカ抜きでなんか話があるんだろ?」


俺はリッカを見送りながら、ギャレを見ずに言った。


「お部屋にお戻りください。サギタを連れて行きます」


「何っ?」


「どうかお部屋にお戻りください」


「ああ、済まん」


---


部屋に戻ってソワソワしていると、ギャレに続いて身代わりが入ってきた。

ギャレは、


「私は部屋の外にいます」


とだけ言ってスッと出て行った。


「あんたがカゾヤマか?」


身代わりがつっけんどんに話しかけてきた。

どういう展開だ?


「サギタと入れ替わるのは失敗したのか?」


「いや、俺はサギタだけど?」


意味が分からない。

俺ははるばる何しにここに来たんだ?


「ベルマからの逆亡命だったのか?もしかしてドッキリか?」


「あんたちょっと落ち着けよ。バラエティ番組の芸人かよ」


ああ、これは本人だわ。


「分かった、落ち着こう」


「そんなに驚くとは思わなかった。まさかチューナーの機能知らんの?」


「機能って翻訳以外にも何かあるのか!」


「いや、だから落ち着こうよ。チューナーは他人の姿をコピれるってネオンが言ってたじゃん」


またネオンか。


「それが、椅子に座ってなくてチュートリアルなかったんだよ」


「ギャハハハハ!なにそれ!」


サギタは床に転がり爆笑して、


「もしかして、説明書読まずに捨てるタイプ?」


「いや、椅子に座らなかっただけだが…」


「人間は椅子があったら座るでしょ普通」


どこかで聞いたことがあるが、俺って普通じゃないのか?


「ただでさえゲームっぽい始まりなのに、あれこれ試すっしょ普通」


サギタは腹がよじれると言いながら笑い続けている。


「普通普通うるせえよ。お前が落ち着くまで暇だから茶でも淹れてやる」


俺はそう言って暖炉に向き直った。


---

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