85.推測
ギャレと別れて宿に戻るとロビーにトーチ達が居た。
「退屈な街だな。お楽しみは外の街にしかないようだし、フラフラとは出れねえみたいだから今晩は部屋で呑んで寝るよ」
ジェイがそういうと、トーチが仕事を忘れるなと嗜めた。ロガは瞑想している。
「分かった。明日の朝ここで」
「あんたらは楽しめよ」
ジェイはニンマリして俺たちを見送った。
「さてと、貴族リッカは本日閉店よ」
「やっぱり性に合わないか?」
「当たり前でしょ?屋敷暮らしが嫌で村を選んだんだから」
「そうだった、済まん」
「さっきの話分かった?」
「乗船は制限中、但し、貴族の正当な旅行は拒めない」
「公爵が絶対に断れない本物で正面突破なんていかにもアズィらしいやり方ね」
「ギャレはなんなんだ?」
「彼も多分貴族。案内人かなにかの名分ならこれも拒めない」
「貴族は信用が違うな」
「他の貴族の領地で何かしたら賠償や領地没収されるからね。下手したら戦争よ?」
「アズィは何かしようとしているが…」
「あの人は異常よ。領地没収かメンツならメンツを取るような男だわ」
部屋に戻る前にリッカが頼んだワインと名前すら分からない小洒落た料理が部屋に届いた。見た目にはテリーヌだがデカい。リッカは給仕をすぐに下がらせて俺たちは食事をしながら話を続けた。
「結局、公爵にアズィが楯突いたってのがこの計画の核心でいいのか?」
「そのようね。公爵は自分の領地を荒らすイセカイジンを捕まえて処刑なりしたい。アズィは王の目が先に狙ってた獲物を横取りされるのが許せないから急いで保護で釣った」
リッカは銀貨1枚分のワインを一気に飲み干した。
「ギャレはアズィの無茶によく付き合ったな」
「バレなきゃただの旅行だもの。私たちすら何をどうするか分かってないんだから公爵がいくら見張ったところで分かりっこないんでしょ」
「他人と完璧に入れ替わる力でもあるのかな…」
「そもそも貴族区にどうやって来るのかしら」
「なにかの修理や配達に紛れるとか?」
「無理ね。貴族の使用人を何年か勤めないと貴族区には絶対に入れない。そのイセカイジンはそんな準備はしてないはず」
「そうなのか。観光地はどうだろう?」
「可能性はそっちかな」
「まあ、俺たちの知ったことではないか」
「そうね。何かあってもその時は私たちは何も知らない被害者でいればいいのよ」
それもアズィの計算のうちか。最悪入れ替わりに失敗したところで俺たちには関係ない。もしも杜撰な変装だったらギャレが見捨てて帰国するだろう。
「とにかく他に危ない目に遭うような可能性がないかは明日のギャレの話を聞いてから考えるしかないな」
「じゃあ、話は終わり。飲むわよ」
このあと俺は人生最大の散財をした。




