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『異世界アンチノミー ――翼神の箱庭――』  作者: めざしと豚汁


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81/116

81.貴族らしく

兄妹が旅立った午後、アズィは俺が村に来てから初めて馬車でやってきた。

御者はいつものフード姿だが、馬車から初老の男女――アズィの使用人らしき二人が降りてきた。


「リッカは部屋に行け。お前は応接室だ」


思わず口を開きかけたが、使用人の前だと気付き黙って従った。


「採寸いたしますので、お召し物を失礼いたします」


初老の男は俺を下着だけにし、優雅な手つきで次々と採寸していくと、

何事もなかったかのように馬車へ戻っていった。


ほどなくしてリッカも採寸を終えたのか、応接室に入ってきた。


「少し待て」


アズィはそう告げて外へ出ていき、

しばらくすると初老の女性が茶を用意して下がった。


「これ、紅茶か!」


香りに反応した俺を見て、リッカが少し驚いた顔をした。

普段“茶”と言っているのはハーブティーで、詰まるところ草の汁だ。

こっちに来て本物の茶に出会ったのは初めてで、思わず声が出た。


「よく知ってるわね。こんなの庶民の間じゃ出回らないよ」


「俺はイセカイジンだぜ?」


「そうだった、忘れてたわ」


アズィが戻ってきて、いかにも自慢げな顔をしている。


「リッカ、淹れてくれ」


リッカは無駄のない動作で陶器のカップに紅茶を注いでいく。


「よし、訛ってねえな」


どうやらリッカへの試験だったらしい。

アズィは俺を見て言った。


「驚かねえとは、さすがだな」


「?」


「カップ一つで銀貨30枚だぜ?」


「それに驚いた」


「お前らのいた世界じゃ銅貨1枚から売られてると聞いて驚いたから、お相子だ」


「なんでまた急にこんな」


「旅の準備だ。リッカは俺の娘、貴族として行く。

 お前は相応の立場に仕立て上げるつもりだったが……なんとかなりそうだな」


「話が見えないな」


「カップを見てビビる貴族はいねえ。滞在先はそういう振る舞いが必要なんだよ」


「わざわざ貴族区なのは何故だ」


「クスリのせいで公爵が渡航を締め付けてて、今は勝手が利かねえからだ」


「よく分からないが、喋ったらボロが出るぞ」


「だからリッカさ。さっき見た通り作法は教えてある。

 お前は王都の大商会の縁者として行かせるから、話しかけられたらリッカに任せて適当に濁しとけ」


「それで、何をすればいいんだ?」


「旅行を楽しめ。対象が合流したらお前が話して安心させる。

 一緒に船でこっちに戻ったら旅行は終わりだ」


「分かった」


「7日後に仕立て屋が服を届けに来たら、翌朝に馬車が迎えに来る。

 護衛はどうした?」


「頼んだ」


「リッカ、銀貨1枚前金だ。練兵場で身なりを整えさせろ。馬も用意する」


「分かったわ」


「ベルマで二人合流する。一人は身代わり、もう一人は警吏だ。

 寝てても着くから何も考えなくていい」


「分かった」


「よし、あとは父親からの餞別だ。派手に使って貴族らしく振る舞ってこい」


テーブルに金貨2枚を置き、貴族と馬車は去っていった。


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