78.神頼み
トーチは祭りのための狩りから戻ったところで家にいた。
事情を話すと、修理すれば使える荷馬車があるからなんとかすると請け負ってくれた。
「金はいい。俺なりの贖罪だ」
イケメン過ぎるトーチと別れ、エルマのところへ行き、ロバに名前をつけたと告げた。
「……良かった。大事にしてあげてね」
「いや、俺に世話は無理だからエルマにやるよ」
「え?」
その後、返事が来たら準備が整うこと、ゴイと話したこと、
俺が追放ではなく“門出”にしたかったことを語った。
「……私、カゾヤマがどれだけ頑張っても……本当は信用なんてしてなかったの。
助けるふりだけだと……ずっと思ってた。
なのに……本当に、助けようとしてくれてたんだね……」
エルマもゴイ同様にボロボロと泣き出し、俺に抱きついてしばらく泣いていたが、
俺はじっとしていた。
エルマは保護欲を強烈に刺激する、か弱い小動物のような存在で、
ゴイと同じ扱いなどできるわけがないのだ。
リッカに見られたら偉いことになるなと考えながら、静かにエルマが落ち着くのを待った。
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牢を出て広場に行くと、丸太で組んだキャンプファイア――
巨大な焚き火の準備が進んでいた。
肉料理屋は屋外に本格進出し、広場にテーブルを並べている。
俺を見つけて手伝いを打診してきたが、宿屋が予約済みだと伝え、その場を離れた。
宿は近隣の農村から来た家族連れで賑わっており、
奥さんに「部屋が足らないから」と交渉され、
俺は急遽部屋を引き払いリッカの家に引っ越した。
「あんた村を出るのを考え直しなよ」
と鼻の下を伸ばしながら言っていた奥さんの妄想は、
明日グランドフィナーレを迎えるだろう。
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リッカは村役たちと、祭りに使う肉の量を巡って何やら揉めていたので、
事務局を離れ、中心地へ夕食の買い出しに出かけた。
市場で干し柿を見つけ、
トーチ家産らしきフェタチーズと卵と蜂蜜を買った。
これは夕食には間に合わないので、
露店で別途ピタと、鳥と玉ねぎを煮込んだシチューを買い、リッカの家に戻った。
買ってきた材料を部屋で混ぜ合わせて土鍋に入れ、
裏庭で火を焚き、沸騰しないよう慎重に火加減をしながら静かに混ぜる。
土鍋を麻布に包んで余熱で蒸したものを倉庫に隠した。
「うまく固まるといいが」
この料理に限った話ではなく、
結果はすべて行動が決めると分かっていても、
最後には願わずにはいられないのが人間なのだ。
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