71.パズルを埋める
俺はまずトーチの奥さんの牧場を訪ね、ヤギ乳を手に入れた。
そこから中心地で蜜蝋、セイロ、土鍋、木のカップを買い、畑でローズマリーを分けてもらった。
「なにそれ? また美味しいものでも作るの?」
「蒸溜茶みたいなもんだが、飲むわけじゃない」
リッカの家の裏庭にある石積みの焚き火台を借り、ローズマリーを蒸す。
バームの香料にする蒸溜水を作っているのだ。
大半は木鉢に溜まらなかったが、実験には十分な量が採れた。
リッカは残念そうだったが、湯気を浴びて香りを堪能して戻っていった。
カップに革で蓋をして紐縛り、他の材料と共に牢へ持ち込み、不思議そうなエルマに実験開始を宣言した。
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俺は狂ったように水筒を振り続け、エルマが怯え始めた頃、ようやくバターの感触を得ていた。
それをエルマに見せる。
「これがバターだ。舐めてみろ」
「……うん」
俺の狂乱に逆らわない方がいいと思ったのか、素直に舐めた。
「……美味しい」
「だろ? だが本題はそっちじゃない。唇、カサカサしなくなっただろ?」
「これ、脂?」
エルマは賢い。
「そう。乳は振ると脂が固まるんだ」
「そうなんだ……」
そこから土鍋で蜜蝋と混ぜ、冷ましてねっとりとしたクリームになったところで香料を混ぜた。
「お茶?」
「蒸したローズマリーで取った水だ」
「……少し塗ってみたい」
鍋を差し出すと、エルマは唇に塗った。
「どうだ?」
「すごい……カゾヤマでもこんなの作れるんだ」
「エルマさん、どんどんキャラ変してるよね?」
「え、何て言ったの?」
「明るくなって嬉しいってこと」
「……」
そこから、蜜蝋の量や香料は適当だから、エルマが納得するまで実験してみろと伝え、
材料は毎日届けると約束した。
「……これを、作って売れってこと?」
「まあ、そうだが、金や場所が要るから、そっちは知り合いに頼んでる最中だ。
まだ分かんねえけど、今はいい暇潰しだと思ってやってみなよ」
「……うん」
素直なエルマさん、素敵よ。
「……カゾヤマは私なんか、助けてどうするの?」
「そこ、気にするな」
「私を抱きたいなら別に構わないけど……」
はあ、人がその話題避けてんのに。
「今は秘密だ。色々整ったら話すよ」
「……うん」
そこから薪を運び、新しい材料を一通り渡し、俺は牢を出た。
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「あんたまたおかしなこと始めたな」
牢番の爺さんが声をかけてきた。
「悪いか?」
「いいや、ワシはエルマが気の毒で仕方がない方さ。村の連中には告げ口しないよ」
「そうか。程よく俺の悪口言って、うまく誤魔化してくれ」
「あいよ」
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俺は木片に載せた新バーム1号をリッカに試すため、事務局へ向かった。
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