7.嘘つきは警吏の始まり
麦か何かの収穫を終えた畑に囲まれた物見櫓に、人影が見えた。
すでにこちらを見つけているだろうから、このまま向かうのが最善と判断し、夕日に照らされた街道を歩いていくと、下にいた青年が声をかけてきた。
「こんにちは」
「やあ、どうも」
櫓から降りてきたもう一人の青年は矢筒を背負っている。
二人は兄弟らしく顔がよく似ていて、格好からして兵士ではなく普通の村人のようだ。
「どうしたんですか? こんな日暮れに」
「実は馬に逃げられちまって」
俺は用意していた嘘を臆さず言った。
この世界に馬がいるのは、例の三人組が連れていたから分かっていた。
ここで“馬”と呼ばれているかは不安だったが、チューナーがうまいことやってくれたのだろう。
二人は顔を合わせて笑い始めた。
「そいつは災難だったね。うん、災難だ」
「その短剣、王都の警吏さんか?」
ケイリ?
ああ、警察か。
短剣にそんな目印があったとは想定外だが、調子を合わせるしかない。
「ああ、荷物も全部なくして参ったよ」
「ん、その瓶はなんだい?」
「何って……ただの水だよ」
不味い。
なんでただの瓶に反応しているのか全く分からん。
二人はまた笑う。
「あんた、お貴族様の出なのか。俺はよく知らないけど、親父が見たらきっと飛びつくぜ」
「それより警吏さん、このまま夜道を歩くのはヤバいぜ?」
「ここらは夜になると黒狼が出る。部屋に余裕はないから家は無理だが、納屋なら泊まってくれて構わないよ」
二人の愛想の良さにもかかわらず、人間不信が俺を迷わせた。
だが、警吏と勘違いしているなら、前回のようにはならないだろう……ならないよね?
「有難い、助かるよ」
俺は覚悟を決めて、二人についていった。
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