6.身元不詳
前回の一件で、この塔が現地民に良く思われていないのはなんとなく分かった。
だから、塔のことは口にしないとして――問題は「どこから来たか」と聞かれた時の対策だ。
ここが現代を模倣した世界なら、人以外から情報を得る手段はいくつかある。
だが今は、それすら不明。
少しずつ調査したいが、憎きオートロックのせいでここを拠点にできない以上、飛び出すしかない。
手始めに、遺物漁りが根城にしているであろう街なり集落を目指すしかない。
ロフトの小窓から外を確認すると、塔の裏手は裾野を覆うように針葉樹の森が広がっていた。
肌寒さから虫やヘビの心配はなさそうだが、何が潜んでいるかは全く分からない。
それでも、灰都を歩くのはあまりに目立つし、水源も期待できない。
よって、トレッキングルートに決定した。
森林を選んで正解だった。
すぐに小さな沢を見つけ、塔にあった瓶ですくって飲んだ。
多分、動物のフン由来の細菌を警戒すべきだが、俺は火なんか起こせないし、今は一応“不死身”なのだ。
迷わないよう視界に灰都を入れながら下り続けること半日、森を抜けた。
ここからは荒れ果てた街道跡を歩くしかなさそうだ。
陽が傾き、空腹と疲労で野宿を考えながら歩き続けていると、微かに木の焼ける臭いを感じた。
そしてついに文明――村らしきものが姿を見せた。
「さて、なんと名乗ればいいんだ?」
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