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『異世界アンチノミー ――翼神の箱庭――』  作者: めざしと豚汁


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59.『そういうもの』

アズィが去った後、再び宿に引きこもり、リッカにどう話すか寝転がって考えていた。

隣国への駆け落ちを考えたが、王の目は当たり前に入り込んでいるだろうから却下。

アズィから逃れるには人類圏を抜けるしかないが、俺はちょっとサバイバルができるようになっただけの取り柄のない男だ。


双子は再生者を定着させるのが目的と言っていたから、助けを求めたところで「どこでも好きに暮らせ」と言うだけだろうな。


「リッカも逃げられないと言ってたし、お互い未練を断ち切るしかないか……」


伝承による思想の檻に、王の目のネットワーク。

教会は必ずしも敵ではないようだが味方でもない。

つまりリッカが俺と生きるのは、勢い任せでは無理なのだ。


『そういうもの』


双子の言葉が俺の存在を再確認させる。

この世界での俺は怪物で、力を隠したところで異物には変わりない。

誰かが俺を受け入れたところで、社会が許さなければ居場所などなく、親しい者は巻き添えになるだけ。

『そういうもの』として、人と深く関わらないのが正解なのかもしれない。


「リッカ……リッカ、リッカ、リッカ、リッカ……」


「私に夢中なのは嬉しいわ」


虚を突かれて飛び起きると、戸口にリッカが立っていた。


「い、いつの間に!」


「包帯を替えてあげようと寄ったのよ。お邪魔だった?」


「今日アズィが来た」


「何を言われたの?」


「俺の新しい身分証を届けにきた。40日後に村を発つと」


結局考えがまとまらなかったため、脚色なしで伝えた。

どうせ俺が言わなくてもアズィがリッカに告げるだけだ。


「……そう」


「逆らう余地はなかった」


リッカは身じろぎもせず床を見つめている。

これは別れ話なのだ。


「分かってるつもりでも、いざその時がくると、中々きついわね」


「そういうわけだから、俺の醜態のことは忘れてくれ」


「行き先は知らされたの?」


「いや」


「なるべく近いといいわね。通い妻が旅費で破産なんて笑い者だわ」


「……」


「さあ、包帯を替えて食事にしよう。今日はウズラをたっぷり獲ってきたから」


そう言って俺の包帯を取り替え始めたリッカは、いつもの顔に戻っていた。

俺は――


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