52.チグハグな対話
「とにかく、設計不備なら……ん? やっぱりここはゲームの中か?」
「ゲーム、でしょうか?」
エリが首をわずかに傾ける。その角度が妙に“均一”で、まるで関節の可動域を計算して動いているようだった。
「カゾヤマさんがゲームだと思って生きる意欲を出すのは良いことですが……愚弟」
「カゾヤマさんの想像は、数多の創作物の影響ですね。他の再生者の皆さんも必ず口にされますが、同じでしょうか?」
また質問で返してきた。
声の高さも、間の取り方も、二人とも寸分違わない。
「待遇の悪さはともかく、おかしな力もらって謎解きの旅に出されてんだ。ゲームじゃなきゃ死後の世界か?」
「カゾヤマさんは生きているじゃありませんか。死んでいるのですか?」
どうにも噛み合わない。俺は質問を変えてみた。
「この世界じゃ死んだらどうなる?」
「翼神様が新たな命として、再びこの世界に生まれ変わらせてくれるでしょう」
「翼神教に死後の世界はないのか?」
「それは、観測不可能ではないでしょうか?」
淡々とした声。
信仰者の熱も、迷いも、慰めの気配すらない。
ただ“事実を述べる”機械のようだ。
「なら、再生者はどこから来るのか」
「分かりかねます。この世界のどこかに、カゾヤマさんの暮らしていた場所があるのでしょうね」
そうか。
こいつらにとっては“別の世界”という概念そのものが存在しない。
だからこそ、俺の言葉が全部“地続きのどこか”に分類される。
「設計の不備に戻るが、その言い方だと設計者は翼神様じゃないんだろ?」
「愚弟」
「はい」
エリが割り込む。
その動きは、まるで“割り込む”という行為をプログラムされたかのように滑らかだった。
「塔はネオンが設計し管理しています。翼神様がお創りになったものに不備はありません、すべて“そういうもの”です」
“そういうもの”。
説明になっていないのに、説明を終えたような口調。
燭台の火が消えかけているのを俺が気にすると、エリが「おや」と言った。
その表情もまた、感情ではなく“表情の選択”に見える。
「燭台を取り替えましょう。愚弟、カゾヤマさんにはお茶のおかわりをお願いします」
ジラは無言で立ち上がる。
足音がしない。
床板が軋まない。
まるで影が移動しているようだった。
長い夜になりそうだ。
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