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『異世界アンチノミー ――翼神の箱庭――』  作者: めざしと豚汁


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52/116

52.チグハグな対話

「とにかく、設計不備なら……ん? やっぱりここはゲームの中か?」


「ゲーム、でしょうか?」

エリが首をわずかに傾ける。その角度が妙に“均一”で、まるで関節の可動域を計算して動いているようだった。

「カゾヤマさんがゲームだと思って生きる意欲を出すのは良いことですが……愚弟」


「カゾヤマさんの想像は、数多の創作物の影響ですね。他の再生者の皆さんも必ず口にされますが、同じでしょうか?」


また質問で返してきた。

声の高さも、間の取り方も、二人とも寸分違わない。


「待遇の悪さはともかく、おかしな力もらって謎解きの旅に出されてんだ。ゲームじゃなきゃ死後の世界か?」


「カゾヤマさんは生きているじゃありませんか。死んでいるのですか?」


どうにも噛み合わない。俺は質問を変えてみた。


「この世界じゃ死んだらどうなる?」


「翼神様が新たな命として、再びこの世界に生まれ変わらせてくれるでしょう」


「翼神教に死後の世界はないのか?」


「それは、観測不可能ではないでしょうか?」


淡々とした声。

信仰者の熱も、迷いも、慰めの気配すらない。

ただ“事実を述べる”機械のようだ。


「なら、再生者はどこから来るのか」


「分かりかねます。この世界のどこかに、カゾヤマさんの暮らしていた場所があるのでしょうね」


そうか。

こいつらにとっては“別の世界”という概念そのものが存在しない。

だからこそ、俺の言葉が全部“地続きのどこか”に分類される。


「設計の不備に戻るが、その言い方だと設計者は翼神様じゃないんだろ?」


「愚弟」


「はい」


エリが割り込む。

その動きは、まるで“割り込む”という行為をプログラムされたかのように滑らかだった。


「塔はネオンが設計し管理しています。翼神様がお創りになったものに不備はありません、すべて“そういうもの”です」


“そういうもの”。

説明になっていないのに、説明を終えたような口調。


燭台の火が消えかけているのを俺が気にすると、エリが「おや」と言った。

その表情もまた、感情ではなく“表情の選択”に見える。


「燭台を取り替えましょう。愚弟、カゾヤマさんにはお茶のおかわりをお願いします」


ジラは無言で立ち上がる。

足音がしない。

床板が軋まない。

まるで影が移動しているようだった。


長い夜になりそうだ。


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