5.興醒めチート
改めて本を開くと文字が読めるようになっていた。
どうやら『チューナー』の効果らしく、これで会話も可能になるようだ。
他に『35mm対空機関砲』なる本もインストールされており、本によると“視線を照準にして念じるだけで撃ち放題”の能力らしい。
「もうちょっと、ネーミングに拘れよ」
俺のロマンはともかく、待望の強チートであったため、ひとまず実利を優先することにして納得した。
他の『暗視』『毒見』『レシピ』は何故か有効にならなかったが、二つまでという決まりでもあるのだろうと勝手に解釈した。
……が、これを作った誰かに一言言わせてもらうことにした。
「チューナーだけは、せめて英語なりで書こうよ」
続いて、俺は、金属ボトルを手にした。
こちらは親切で、“傷万能ムース”という直球なネーミングの下に、止血・消毒・鎮痛+患部リペアと書かれている。
「はいはい、ちょっとSFなヒーリングポーションね。こっちの瓶は……ちょっと洒落てるが、なんてことなさそうだな」
警戒を忘れて舞い上がっているのは否定しない。
だが、速攻で殺された体験からすれば、ドラゴンだろうが怖くない異能が手に入れば、きっと誰だってこうなる。
無事、異世界イベントを迎えて前進の足がかりができたことに安堵したものの、
ここのチグハグな文明レベルや、ループの矛盾点など、不安要素が解消されたわけではない。
そして、さらに、それとは別に、少し急ぐ事情ができた。
――塔には水も食料もないのだ。
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