48.仲間
トーチの家に着くと、すでに酒盛りは始まっていた。
馬小屋の隅に焚き台が据えられ、トーチの他に男が二人、そして奥さんと走り回る小さな子どもが三人。
石積みの壁にはオイルランプがいくつも吊り下げられ、煤と一緒に獣脂の焼ける匂いが漂っている。
「よう、来たか。こっちだ、座ってくれ」
丸太を切っただけの固い椅子に案内され、トーチが俺を紹介した。
「カゾヤマだ。こいつはロガ、あっちはジェイ。あとは、うちの家族だ」
「よろしく」
ロガが俺を指さしながら笑う。
「俺は処刑される方に賭けてたのによ」
「ロガは人を見る目がねえ。俺っちは善人だと分かってたぜ、なあ?」
色褪せたサンタクロースのようなジェイが、ジョッキを渡しながらウインクしてきた。
「しばらくだけど村の世話になるよ」
俺はエールの入ったジョッキを軽く掲げて飲み干した。
息が白い季節だろうが、仕事の後の一杯はうまい。
奥さんが鍋を運んできた。
この香りは……チーズか? 鍋の中身は――
「まさか、チーズフォンデュか!」
「なんだそれ? まあいいや、ほらよ」
串に刺さった茹でた腸詰めを手渡しながら、トーチが言う。
「悪い、ウズラは子供が気に入っちまったから今日はお預けだ」
ペットまでこなすウズラ、万能すぎるだろ。
「いいよ別に。ところで、トーチはこの村の生まれか?」
庭付き・馬小屋付きの家から予想していたが――
「うちは親父の代からここだ。でも軍に居たから、帰ってきたのは最近だ」
「俺たちは元々軍の仲間だ。俺とジェイが除隊して仕事に困ってた時に、トーチに誘われてここに居着いた」
俺の番が来て、質問攻めをどうやり過ごそうかと迷っていると、トーチが唐突に切り込んできた。
「で、カゾヤマは、リッカとどうなんだ?」
「どうって、別に?」
「んだよ、情けねえな」
ジェイが調子に乗って煽ってくる。
「次の賭けはこれに決まりだな」
ロガはまだ俺の不幸が見たいのか、「振られる方に賭けるから今度こそ頼む」と勝手なことを言い出した。
学校もそうだが、退屈な隔離空間の娯楽は少なく、この手の話題は数少ない娯楽なのだ。
迷惑しながらも、この時間をどこか楽しみつつ、やがてお開きとなった。
「また明日な」
「ジェイ、明日から囲いだぞ!」
「分かってら」
俺はトーチに「囲いってなんだ?」と聞くと、
「ああ、冬場は狩りができねえから、生け捕りして飼うのさ。囲いはその準備だ」
と教えてくれた。
ロガは「貴族からたんまりせしめて冬場をやり過ごす祭りだ」と張り切りながら帰っていき、
俺は薄っすらと白くなった夜道を、宿へ向けて歩いた。
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