47.帰る場所
ゴイの仕掛けた罠に掛かったその獣は、最後の生命を燃やして抵抗した。
そして、途中で合流した隻腕の狩人トーチの槍が、それを終わらせた。
俺は死が恐ろしいものだと身に刻まれたせいか、未だに慣れずにいる。
だが、他人に手を汚させて自分は澄まして生きるのは、さらに罪深い。
どんなに自分を責めようと、生存競争の渦中では、ある程度利己的にならねば生きていけないのだ。
三人で猪を引きずり、台車に載せた頃には、村に戻る体力も怪しかった。
しかし泣き言を言える立場ではなく、最後の力を振り絞って台車を押していた。
トーチは干し肉――通称“靴底”――を噛みながら、生きたウズラの詰まった麻袋を靴先でつつきつつ、俺に話しかけた。
「こいつは生かして卵を取るのもいいが、丸焼きもいいぜ? 骨ごとバリバリ食える」
「鳥は好きにして良かったんだよな」
「ああ、市に出すのも構わねえ」
ウズラ万能すぎるだろ。
「しかし、なんでこんな村に居着いたんだ?」
「まあ、次の行き先が決まるまでだがな」
「そうかい。ま、しばらく居るならコイツで呑もうや。おごるぜ」
「タダ酒は怖いな」
ニヤッと笑いながら返したものの、例の事件があったから半分本気だ。
「何、アンタが牢屋に入った時に処刑されるか賭けてたんだが、アンタが無事で良かったぜ」
勝ったのか。
「なら遠慮は止めた」
村に戻り、解体場に獲物を届けると、職人が紐を使って採寸を始め、ゴイに銅貨を渡していた。
物珍しそうにしている俺に、トーチが言う。
「罠を掛けて獲物を持ち帰ったら稼ぎになる。捕れなきゃまた明日だ」
ギルドの討伐報酬ってところか。
森が豊かなのか獣の数が多すぎるため、狩人同士の縄張り争いは起きないらしい。
ほとんどの仕事がフルコミッションで、怪我や病気をすれば路頭に迷う社会では、同業と争うより協力する方が賢明というのもある。
トーチと俺はゴイから分け前を受け取ると、
「家の場所を教えるから、着替えたら来い」
と言われ、二人は帰っていった。
トーチは奥さんと子供の元へ。
ゴイは妹の元へ。
俺は一人、宿へ――。
「そろそろハーレム展開くらいサービスしてよ」
俺は夕陽の向こうにいるかもしれない誰かに、愚痴をこぼした。
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