41.領主の三男
夕刻、約束通りリッカの家に向かうと近くに軍馬が3頭繋がれ水桶に首を突っ込んでいた。フードを被ったマントの男が家の前で待ち構えており、面識もないのに「カゾヤマだな?アズィ様がお待ちだ」と無表情に言った。
応接室に入るとフードの男がもう一人立ち、ソファには身なりの良い顎ヒゲのおっさんがどっしりとかけていた。
俺は貴族に接したことなどなく、思わずフード1に助けを求めたが微動だにしない。フード2も宙を見つめている。
「別に、リッカと同じように接してくれて構わないぜ?」
そう言われましても。創作物では貴族とタメ口をきき、王様に啖呵を切る主人公が当たり前だが、多分そんなことをすれば、フードが容赦なく俺の首をはねるだろう。俺は慎重に、
「カゾヤマと申します。何かお話があるそうで」
と切り出した。
「いやいや、礼儀のことなら本当に構わねえ、まずは座ってくれ、お前らは外せ」
笑顔でそう言うと、フードコンビはさっと部屋を出ていった。
「呼出して悪いな、俺はアズィだ。リッカの養父でしがない役人をやってる」
部屋の外からドタドタと音が聴こえてリッカが飛び込んできた。
「ごめん、アズィ。寝ちゃってた」
このドジっ娘は、悪びれもせずアズィの隣に座り結った髪を直している。
「ハハハ、また昼から呑んでたのか」
「今日は特別、カゾヤマの出所祝いよ」
なんだか任侠映画に迷い込んだ気になったが、俺の実際の立場からしっくりときた。
「まあ、いい。話ってのは、そうだな、俺がイセカイジンのお前と仲良しになろうってやつだ。」
俺は、驚愕してリッカを見た。そしてリッカは俺以上に驚いていた。
「ちょっと…」
「ああ、見ての通りリッカから聞いたわけじゃねえから勘違いするなよ?村役からお前の足取りを聞いて俺の情報と繋げた結果だ」
アズィがヤマノのパトロンなのか?真っ先に浮かんだ考えを見透かしたアズィは言った。
「多分お前が考えてる小役人は、大して関係ねえよ。俺は王の目の一員だから目端が利くのさ」
(なんかヤマノよりヤバそうなのに出会っちゃったんですけど…)
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