34.プリミティブ×機関砲
やがて街道は川を離れ、風景はゆるやかな起伏のある木立へと変わった。
街道に新しい轍はなく、この地方では船が主な移動手段であることがよく分かる。
道端でベリーのような赤い実を見つけたが、
噛んだ瞬間、苦味と酸味が同時に襲い、食える代物ではなかった。
しばらく進むと栗のイガを発見した。
だが中身は空っぽ。
それでも躍起になって周囲を探し回り、
ようやく一掴みの栗を手に入れたとき、
俺は大自然に勝利したような気分になった。
「よし……これは祝うべきだろ」
居ても立ってもいられず、焚き火の準備を始めた。
木が炭になる前に栗を放り込むのは不味い気がしたので、
焚き火は放置して水を探しに行く。
少し歩いたところで小川を見つけ、
水を汲もうとした瞬間、魚が跳ねた。
――魚だ。
紛れもない、貴重なタンパク源。
とはいえ、俺はクマではない。
素手で捕れるわけがない。
焚き火に当たりながら、
どうにかしてあの魚を手に入れる方法はないかと考え続けた。
栗が熾の中で爆竹のように弾け、
面倒な皮剥きにしばし集中する。
大して甘くもない栗を、
それでも“最高のご馳走”として絶賛した。
薪をありったけ集め、
そのままそこで朝を待った。
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翌朝。
俺はすぐに小川へ向かった。
今は岩陰から慎重に観察している。
岩にせき止められた狭い天然プールには、
大小の魚が群れをなしてゆったりと泳ぎ、
流れてくる餌を待ち構えていた。
すでに俺は結論を出していた。
手段は問わない。
俺は水面に向けて“機関砲”を撃った。
昨夜、ダイナマイト漁の映像を思い出した結果である。
狙い通り、大量の魚が浮き上がり、
水面を流れてくる。
俺はそれを下流の浅瀬で必死に拾い集め、
三十センチ近い岩魚か、マスの一種をごっそり手に入れた。
その場で解体し、
エラに蔓草を通して束ねて担ぎ、
焚き火へ戻る。
削った岩塩をまぶし、二匹を串焼きにした。
残りの魚は焼き枯らしにするため、
トライポッドを組んで吊るし、
じっくりと火にかける。
異世界で禁止漁法など気にしていられない。
だが同時に、
この力を使うことが“授けた相手の思うツボ”なのではないか
という疑念が胸をよぎる。
複雑な気持ちで魚をむさぼり食う。
焼きたての魚は、驚くほど旨かった。
腹が満たされると、
このまましばらくここで暮らすのも悪くない――
そんな甘い考えすら浮かんでしまう。
食後の満足感に包まれながらウトウトし、
出発のタイミングを逃したが、
今の俺には、それすら贅沢な時間だった。
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