32.軌道修正の決意
僅かな眠りから目を覚まし、
最後の干しキノコのスープを啜りながら、
俺は湖畔を徒歩で踏破してベルマを目指すプランを立てた。
湖畔に出て舟に助けを求めることも考えた。
だが、あの村で“怪物騒ぎ”が起きていたら、
俺がどう扱われるか分かったものではない。
それは最終手段だ。
舟の旅程から逆算すれば、
あと二日も歩けば、悪くともベルマの圏内には入れるはずだ。
脚の傷は、表面のカサブタを除けば“なかったこと”になっている。
強力な薬だが、これも異世界人であることを晒しかねない呪われたアイテム。
扱いには注意が必要だ。
ともあれ、やるべきことは決まった。
俺は行動を開始した。
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以前、何かのドキュメンタリーで見た遭難時の基本を思い出す。
まずは周囲を把握するため、高い場所を目指す。
開けた丘陵地の草原を登り、
遠くに湖を確認したところで腰を下ろした。
火口を点検し、
残雪から流れ出す水をシャツでろ過して水筒に貯める。
食料はない。
だが、草でもなんでも食べて、
何としてでも辿り着いてやる。
そして――
この世界に俺を呼んだ“何者か”を暴き、締め上げる。
胸の奥で、怒りと決意が静かに燃え上がった。
「よし、軌道修正だ。待ってろよ、神」
俺は湖に向けて踏み出した。
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