31.狂わされた計画
「うわあ! なんだてめえ……!」
ブスブスと燃える偽タルガンの飛沫に照らされ、
“息子”の眼は限界まで見開かれていた。
何が起きたのか理解しようと、恐怖と混乱が入り混じった表情で固まっている。
「か、怪物……」
息子は背を向けて逃げ出した。
だが、松明を持ったまま走るその姿は、暗闇の中では格好の目印だ。
俺は一瞬で、仕留めた。
「ハア……ハア……ざまあみろ……。鞄は、あそこか」
這うようにして鞄まで戻り、虎の子の万能ムースを使う。
傷は塞がらなかったが、血は止まり、痛みが引いていく。
どうやら“瞬時に回復”というわけにはいかないらしい。
疼きが収まるのを、ただじっと待つしかなかった。
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「さて……どうする」
水筒から水を飲み、
幹の半ばで砕かれ、燃えさかる立木を眺めながら状況を整理する。
このまま誰かが来るのを待ち、落雷のせいにでもするか?
――無理だ。
木っ端微塵なんてアニメの演出じゃあるまいし、現実味がない。
それに、村人がこいつらの仲間なら、
結局俺も“消される”だけだ。
「クソッ……大人しく金だけ取られた方がマシだったのに……」
切株に置かれた偽タルガンの松明を掴み、
俺は急いで木立へ逃げ込んだ。
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思案の末、村が信用できない以上、
舟に戻るという選択肢は完全に消えた。
松明でわずかな暖を取りながら、
火口茸の存在を思い出し、種火を移す。
そして村とは反対方向へ歩き出した。
「マリオやモズ……せっかく色々してくれたのに、台無しにしちまった」
今回ばかりは、自分の甘さを擁護する言い訳が一つも思いつかない。
発見されるリスクから焚き火はできない。
このまま立ち止まれば凍死する。
歩き続けるしかない。
道なき闇の林を進み、
転ぶたびに神を呪った。
三時間ほど歩いただろうか。
茂みがガサッと動き、鹿が飛び出した瞬間、
心臓が止まりそうになり、
パニックのまま息が上がるまで走ってしまった。
岩陰でようやく呼吸を整える。
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松明の油が尽き、
明かりとしての役目を終えようとしていた。
俺はついに移動を諦めた。
村からはかなり離れたはずだ。
冷静に考えれば、もし現場を見つけたとしても、
“未知への恐怖”から深夜の山狩りなどしないだろう。
落ち葉や小枝を寄せ集め、
小さな焚き火を作った。
寒さに震えながら、
最悪の未来が頭をよぎる。
――今リポップすれば、灰都の周りで越冬することになる。
宿場に入れない以上、
リポップと凍死のループは必然。
それは本当の地獄だ。
自分を脅し、 闇の中で吠え、心が折れないよう歯を食いしばった。
「絶対に……死ぬわけにはいかない」
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