3.ループもの?
目が覚めた途端、震えが襲ってきた。
なんとか身体を起こし、塔のベッドであることを確認した結果――俺の異世界転移が確定した。
「死後の世界ってわけじゃなさそうだな」
三途の川を信じている俺は、死後という考えを除外した。
もしかしたら事故で昏睡状態になって、こんな夢を見ているのかもしれない。
だが、さっきの苦しさはあまりにも生々しい。
「ああ……ループかあ。一番辛い系じゃん…」
死を繰り返しながら謎を解いていくのは、見ている分にはスリリングだ。
だが、いざ自分がやるとなると恐ろしいのは、先ほどの震えが証明している。
ここでもう一つの現実的な考えが浮かんだ。
何らかの事件に巻き込まれて、この塔に幽閉されているという仮説だ。
これは全て辻褄が合う。
熟考……仕事柄、異世界ものに触れすぎて、頭がおかしくなってんじゃないかと自分に自信がなくなってきた。
とりあえず外が危険なのは分かった。
誘拐にしては鍵もかけられていないことから、逃げるより籠城を優先すべきだ。
前回同様、階段脇で服を着ながら次の行動を練る。
仮に塔の中に敵がいたとしても、殺されはしないのは部屋に戻された経緯から推察できる。
万が一、異世界ループものなら最悪死んでもやり直しが効く。
……すげー嫌だけど。
かくして塔内を探索することにした俺だが、身体に恐怖が染み付いてしまったせいで、階段を降りきるまでに最初の三倍の時間はかかったような気がする。
目的地のドアを開けた時の軋みは、もはやホラーの世界。
腹のあたりに針を刺されるような痛みを感じながらも、なんとか足を踏み入れた。
部屋は吹き抜けになっており、螺旋階段の先にロフト状の踊り場が二つ見える。
上段で行き止まりになっている。
小窓が点在しているため暗くはないが、静まり返った空間は廃墟に入った時と同じ不安を感じさせた。
部屋の中央には、なんの変哲もない木製の椅子。
部屋の隅には、飾り気のないキャビネット。
塔にはコンセントが一切なく、照明器具すらない。
家具の少なさから、この塔は人が滞在する用途ではないのだろう。
だが玄関のオートロックから、全く電気がないわけでもなさそうだ。
「うーん、分からん!」
俺は日頃から平静を保つために、何かと声に出す癖がある。
だが、早くも慎重さを忘れかけていることに気づき、思わずあたりを見回した。
椅子の周りの床の黒い染みが、なんとなく映画でよく見る拷問シーンを思い起こさせたため、触れないことにして螺旋階段を上がる。
一つ目のロフトには、場違いなドレッサーがあった。
だが使われている様子もなく、引き出しは空だった。
鏡には馴染みの顔が映っている。
シャツの襟が汚れていた。
「……一体どういうことだ?」
首を縄で絞められたにも関わらず、痕跡は一切ない。
なのにシャツは汚れている。
誘拐説に綻びができた上に、ループ説まで怪しくなった。
「推理が外れて謎が増えた。これは良くない兆候だぞ?」
鏡に向かってつぶやき、二つ目のロフトを目指した。
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