24.休息
旅籠は宿場ほどではなかったが、千人ほどの農村の中心地となっており、市街地は旅人と住民で賑わっていた。 宿場同様に検問されるわけでもなくすんなりと入れたが、住むとなると身分証が必要となるのだろう。
残念ながら温泉はなかったが、昼間に炭焼きの排熱を利用した銭湯があると知り、明日の楽しみにすることにした。
宿を決め、言われた通りに詰所を訪ねて話をすると、台帳を調べた係員が、
「明後日にはここへ来るだろう」
とモズの到着時期を教えてくれた。
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宿に戻る途中、酒場に寄って久々に“文化的な食事と酒”を楽しんだ。
疲れから寄り道せず宿に戻り、横になって銭湯を想像しているうちに、いつの間にか眠っていた。
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翌日。
早速銭湯に向かった。
木桶が並ぶ浴室では、湯番と呼ばれる子供が水を足して湯加減を整え、背中を流してくれる。
斬新だが合理的なシステムだ。
まともな石鹸などなく、髪はゴワゴワ、肌はピリピリに仕上がったものの、
この世界に順応し始めた“新生カゾヤマ”には十分な贅沢だった。
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昼になり、露店でピタと根菜を煮込んだトマトシチューを買い、口に押し込む。
不味くはないが、出汁のない塩辛いだけのソースは食レポに値せず、さっさと散策に戻ることにした。
食料の補充はモズと相談してからの方が良さそうだったため、買い物は特にせず、
鉱夫に言われた通り賭場には近づかなかった。
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町外れに小さな修道院を見つけ、情報収集のため教会に入ってみた。
この世界の宗教概念は元の世界に近いが、どこか原始的だ。
精霊伝説や小難しい教義はなく、
「天変地異を避けるには神への感謝を欠かしてはいけない」
という、やや強迫的な思想が中心にある。
修道院は、人々の生活ルールやマナーなどのガイドラインを“教義”として広める役割を担っているようで、
哲学から自分で悩み答えを出させようとしているわけではない。
俺は僅かばかりの寄附をして教会を出て、修道院の庭で石鹸を作る修道女たちをしばらく遠くから眺めていた。
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冷えてきたため宿に戻り、路銀を確認すると、間もなく二枚目の銀貨を崩すことになると分かった。
装備を買い込んだのもあるが、この先“無職でぶらぶら旅をする”身分でもない現実に、少し不安を覚える。
俺は大人しく宿にこもり、モズの到着を待つことにした。
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