19.旅の再開
ヤマノは約束通り、街の近くで俺を解放して去った。
俺は美しい紅葉の中、街道を歩き始めた。
身分証の発行をヤマノに要求したものの、すぐには無理だと断られた。
アテが外れたが、どうにもならなさそうなので街には入らず、食料だけ売ってもらう交渉をする予定に変更した。
街の入口が見えてきたあたりで騎馬が向かってきた。
思わず隠れようとしたが、お互い見えているので諦めてそのまま接触すると、ヤマノに同行していた兵士だった。
「ほらよ」
「なんだ?」
「滞在許可証だ。門番に見せろ」
そう告げると、兵士はサッと方向転換して去っていった。
許可証には『通過』『滞在3日以内』と書かれ、保証人にヤマノのサインがあった。
思わぬヤマノの気まぐれに一応感謝はしたものの、
“トランジットでゆっくりさせない”という仕返しが、俺たちの関係性をよく表している。
だからと言って文句を言える立場でもない俺は、言われた通りにして無事街に入った。
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その街は エリンヒャ という名だった。
地図で確認すると王都とは反対方向の辺境に位置し、銀の採掘が主要産業らしい。
宿場と違って滞在許可証が必要だったのは、そういう事情かと納得した。
冒険者ギルドがないか探したが、あるはずもなく、殺風景な通りにげんなりして、さっさと出る決意をした。
乗り合い馬車の事務所を訪ねてみたが、十日に一本しか出ておらず、次は六日後。
歩くしかないようだ。
当てもない旅になったとはいえ、雪が降れば恐らく春まで身動きが取れなくなる。
なるべく快適な滞在先を早く見つけねばならない。
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街の中央広場に出たところで宿屋の看板を見つけ、個室を二日借りた。
経営者の爺さんが温かい茶を淹れてくれ、世間話をしたそうにしていたので、
地図を広げて「この街はどんなところだ」「こっちは雪深いか」など質問攻めにした。
そのまま夕飯を頼み、今は部屋でやたら硬いパンをミルクスープに浸しながら、再び地図を眺めている。
爺さんの話だと、この季節から王都に行くなら宿場に戻る必要があるらしい。
王都の次におすすめの街は、湖畔の交易都市 ベルマ だと教えられた。
ベルマは国の南北の中間に位置し、湖の対岸の隣国とも貿易が盛んで、
王都に次ぐ賑わいを見せる公爵領の首都だそうだ。
ただ、近いと言っても馬車で二十日近くの行程で、歩いて行くのは無謀らしい。
いっそ馬でも買ってみようかとも考えたが、乗馬の経験もなければ手入れも分からない。
世話が嫌で動物を飼いたいと思ったことがない俺が、いきなり大型動物はハードルが高すぎる。
早々に断念した。
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また明日にでも爺さんに相談してみよう。
久しぶりの布団に幸福を感じながら、俺は熟睡した。
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