18.相互確証破壊
「おい、ハッタリで調子に乗るなよ?」
ヤマノは俺の澄ました顔に腹を立てたのか、語気を強めた。
「なあ、ここでお前を撃ったらどうなるかな……前回は皆殺しにしちまったが、今回はそうしない。お前が死んだ証人が要るからな」
これまで俺のような力と対峙したことがないからこその盲点。
自分が仲間の前で殺されて異世界人とバレたら、ヤマノもチェックメイトだ。
「異世界人を毛嫌いするパトロンに、“実は私も異世界人です”とは言えないよな?」
「なっ! ……畜生」
「畜生はどっちだよ。散々他人を嵌めて追い詰めてきたのはお前だろが」
「そうだ。仲間にならなきゃ、そいつらをもっといたぶるが、いいのか!」
「え、知らんし。会ったこともない人間なんか、俺にとっては居ないのと一緒だし」
俺はヒーロー願望なんてない。
くだらない脅しは相手にしないに限る。
「……」
「さあ、交渉再開といこう。このまま街中を通過して、俺を捕まえたと宣言しろ」
「は?」
「質問は後だ。お前のメンツは立ててやるって言ってんの。お前はそのまま別の街に向かって、近くで俺を降ろして、以後指名手配禁止」
「それじゃ兵士が納得しねえ」
「知るか。パトロンの名前でも出して、自分でどうにかしろよ。俺が茶番に付き合ってやるだけありがたいと思え」
「……俺が裏切るとは思わねえのか」
「その時は、死ぬ気で――いや、何回死んででもお前を殺しにいくわ」
「くそったれが」
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こうして俺は自由の身になった。
ヤマノは約束を守り、俺をどこかの街へ送っている。
弱みでも握ろうと、馬車の中で俺について根掘り葉掘り聞いてきたが、俺はすべてはぐらかした。
「なあ、俺らってこんな世界で何をさせられてんだろうな」
ヤマノがポツリと言った。
「お前は調べようとしないのか?」
「最初は必死に情報を集めたし、同じ境遇の連中もそうした。だが、すぐに行き詰まって、それでもいつか誰かが使命を伝えに来るんじゃないかと信じてたが……俺は早々に待ちくたびれて諦めたよ」
「少しは何か分かったんじゃないのか?」
「何も……ホントだぜ? それでおかしくなったやつらもいるし、行方知れずは少なくねえ」
「再生にも何かイレギュラーがあるのか」
「分からねえ」
俺が会話をやめて、推理と呼べない推理をしていると、
ヤマノが少しだけ期待の眼差しを向けてきた。
だが、俺は首を振って荷台に寝転がった。
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