13.35mm対空機関砲
翌朝、店を出た俺は、イーラから聞いた乗り合い馬車の事務所に向かった。
幸い席は空いており、分担の打ち合わせが行われて、買い出しに行く者、荷を積む者に分かれた。
俺は荷を積む作業を手伝いながら出発を待った。
ちなみに料金は、客に母娘がいたため高い方になったが、誰も文句を言わなかった。
きっといつもそうなのだろう。
「それじゃ、出発するぜ」
御者が馬に鞭を入れ、馬車はゴトゴトと動き出した。
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街を出て一時間ほど経った頃、馬車の後方に騎馬兵が見えた。
強行軍なのか、次第に距離が詰まり、馬車を追い抜いていく。
やがて馬車は停車した。
「人相改めだ。全員馬車を降りてしばし待て」
皆、不安そうな面持ちで馬車から降りる。
俺は隣にいた母娘に訊ねた。
「こういうことはよくあるんですか?」
「さあ、私たちも初めての旅ですから」
兵士は街の衛兵らしく、少し離れた場所で護衛と談笑している。
何を待っているのかと街の方角を眺めていると、一台のゴツい馬車が向かってくるのが見えた。
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馬車から降りてきたのは、二人の衛兵と――かつて俺を絞め殺した男だった。
男は俺を見て目を丸くしながら、
「あ、あいつだ!」
と指をさしてきた。
俺とやつは“初対面”のはずだが、一体何事だ。
兵士は威嚇するでもなく、他の乗客を馬車に戻し、
俺を置いて出発するよう指示した。
護衛が俺の鞄を投げ捨て、こちらを振り返りもせず去っていく。
「えー、状況が分からないんだが?」
「左肘に並んだホクロ」
「は?」
兵士が俺に見せるよう、手振りで促す。
(なんでそんなこと知ってんだ?)
一瞬イーラが頭をよぎったが、それにしても分からない。
動かない俺に、三人の兵士がジリと距離を詰めてきた。
「早く見せろ!」
「分かったから落ち着け」
俺はポンチョを脱ぎ、袖をまくって肘を見せた。
「……おい、馬車に入れ」
兵士は明らかに怯えている。
鉄格子付きの馬車に興味がないわけではない。
だが、次のループに備えて情報を引き出したい。
そんな狂気が冷静さを上回り、俺は兵士を無視して絞殺魔を睨みつけた。
「お前はなんなんだ?」
「うるせえ化け物! お前は俺が確かに仕留めたんだ!」
雷に撃たれるという表現があるが、まさにそんな感覚が俺を貫き――理解した。
「リポップ……」
俺はそう呟き、全力で走り出した。
塔でシャツの汚れを見て、なんで思いつかなかった!
勝手にループと思い込み、チートに浮かれてこのザマだ。
恐らく絞殺魔は俺を街で見つけ、街を出るタイミングを見張っていた。
やつの正体はわからないが、俺じゃない異世界人と過去に何かあったのだろうか。
草原を駆け下りながら振り返ると、囲むように追ってくる。
死なないなら永遠に閉じ込めるに決まっているし、自害できないよう何をされるか分かったもんじゃない。
「よし! 終わりだ。ここまでだ!」
俺は息絶え絶えに宣言し、“待った”のポーズをとった。
俺の降伏を見てニヤつきつつも慎重に近寄ってきた兵士と絞殺魔は――
次の瞬間、轟音と共に全員蒸発した。
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