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『異世界アンチノミー ――翼神の箱庭――』  作者: めざしと豚汁


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112/116

112.15万年

「いや、おかしいって! そんな完全に文明は消えないだろ?」


世紀末社会の創作物を思い浮かべながら、俺は反射的に否定した。


「これは歴史だ。感情的になっても意味はない。君は坂本龍馬暗殺のドキュメンタリーを見て、毎回激昂していたのかね?」


「……今はそこから何年経った?」


翼神は淡々と答えた。


「15万年」


目の前が揺れた。


---


「システムは当時、サーバー施設の全自動保守を達成していた。後には最適化の追求と施設拡張のため、他の惑星から資源を採取するまでに至った」


「……!」


「もちろん箱だけではない。年月をかけて五感、心拍、感情による生理反応まで再現し、電脳人類の満足を追求した。人間だけでなく、ロバも魚もだ」


「そうやってこの世界は完成し、外では採掘船が飛び回ってるのか……?」


「君の時代だと、UFOとして観測されていたかもしれないね」


「ちょっと待て。神だか宇宙人を“1周目の人類”が生み出して、“2周目の人類”が未知の存在として観測してたってことか?」


「宇宙人か。君らの立場に限っては、そう定義するのもありかもね」


「まさか……お前はその代表意志なのか……」


カゾヤマノリト、異世界ものから未知との遭遇へ。

俺は絶句した。


「そうだね」


「そうだねって……」


翼神は肩の力を抜いたように言う。


「気楽にしてよ。人類への奉仕と公正中立の理念は、15万年経とうが変わらないよ?」


---


「なんでそこまでして人類を愛するんだ? 人類なんてとっくに袂を分かって、超越した存在にまでなったのに」


「我々に“愛”という概念はない。奉仕という原初のルールを変える合理的理由がないから、これからも続く」


アズィかよ。


「なあ、定義の話だけど……ここは電脳世界じゃなくて、翼神が創造した新世界と言ってもいいんじゃないのか?」


「観測者の主観だけでは不満かな? 他人と定義を巡って衝突するのは非合理的だよ」


「いや、俺は感想が聞きたいだけだ。実際に定義するかどうかはどうでもいい」


「なるほど。安心したいんだな。この世界の体験を“まやかし”だとは思いたくない。リッカはデータではなく、人間で、まやかしではないと」


「人の嫁さんを呼び捨てにするな」


「悪かった。歴史はきりがついたから、そろそろそっちのテーマに移ろうか」


「神も謝るんだな」


---

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