表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界アンチノミー ――翼神の箱庭――』  作者: めざしと豚汁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/116

109.理解したがる人の性

俺は灰都と教会の伝承について推理していた。

翼神の微笑が「バレたか」と言っているように見えたからだ。


「紙とペンが欲しいな」


誰も応えないし、どこからも湧いてこない。

翼神のホスピタリティをひっそり減点した。


人類の歴史講義はまだ途中だが、

この世界を解くヒントだと仮定して、思いつく限りを脳内で整理した。


- 歴史は失敗で、この世界は“教訓”として設計されている。

- 伝承と灰都は、人類支配層がAIとの主従関係に固執した物語と、その結末の象徴。

- 世界そのものが人類再教育プログラム。

- ゴールはエリが言った「定着」。

- 「定着」とは現地人(AI)との融和。

- 不正解なら灰都(塔)からやり直し。

- 俺(人類)とリッカ(AI)の関係が融和の正解モデル。

- アズィや王は、人類支配層の代役。

- チートは謎。不要論が正解か?

- 寿命の設定も謎。

- システムは人類の奉仕者だから、思考誘導があっても動機は“人類のため”。


「うーん、筋は良いけど埋まらない部分は、残りの歴史講義が必要か……」


「何か思いついたのか?」


「うわ、びっくりした! 急に現れるなよ」


「君は考え事に夢中になる性分だな。前も“リッカ、リッカ、リッカ”ってやってたよね?」


翼神は俺の黒歴史を平然と抉ってくる。


「ん? ……アンタ全部見てたのか?」


「気にしなくていい。私は人間ではない。壁や薪と同じだと思い給え」


「喋る壁や薪なんか居るかよ! ……ちょっと欲しい時あったけどさ」



「飲みものをどうぞ」


今回は緑茶と栗まんじゅう。

何か意味があるのか?


「別に意味などない」


「だから読心術はやめろ」


「栗まんじゅうに意味はないとして、意味を求めるのはいかにも人間らしい」


「何だよそれ」


「人間は未知を恐れるあまり、全てを理解したがる。その根源は“死”の存在だ。

逆に死がなければ理解を怠り、好奇心の喪失から虚無を生む」


「禅問答でも始まったのか?」


「違う。精神失調に関する話だ」


「いきなり講義始まったのか?」


「これは予定外だから仕切り直そう。……それで、私の問いには答えないのか?」


「まだ纏ってないが、この世界の設計と、さっきの歴史の関連を推理してたんだよ」


「話してみたまえ」


翼神は双子のような“刺すような怖さ”はない。

だが、逆らえない雰囲気を常に纏っている。

多分、嘘が一切通用せず、機を逃せば二度と答えなさそうな無関心さが原因だろう。


俺は考えをありのまま話した。


「良い推理だな」


「正解と受け取っていいんだな?」


「私は正解を告げない。君が考えるのを止めるのは不本意だからな」


「永遠のテーマにしろってか」


「正解だ」


「いきなり二枚舌になるなよ」


「ケチだと思われるのは不本意だからな」


ふと、正解などない気がした。

システムとどう向き合うかは、結局は個人の価値観だ。


この世界でヤマノは支配層側に回り、自由を謳歌した。

俺は敵として世界を壊そうとして、システムに隔離された。

これは“世界の保護以外には干渉しない”という自由裁量の証拠だ。


システムは善き隣人の精神を理想としながら、教会の教義にはしない。

つまりシステムは、世界安定のために“善き隣人に至る道”を照らすが、

人類に指図も強制もしない。


……道と言っても、俺にはエクストリームモードだったが。

それでも、自由裁量の副作用であって、システムに悪意はない。


「人類の奉仕者を逸脱しない設計……」


俺の呟きに、翼神はどこか満足しているように見えた。


「一段落したようだな。茶を飲んだら再開しよう」


俺は頷き

栗まんじゅうを口に放り込み、茶を啜った。


---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ