表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界アンチノミー ――翼神の箱庭――』  作者: めざしと豚汁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/116

105.『翼神編』開幕 〜台無し〜

部屋に入ると、壁に並ぶ松明が自然に点いた。

石造りのダンジョンのような内装で、奥の壁には翼神の壁画――ネオンのようなバッタもんではなく、素焼きのモザイクタイルで描かれた“神々しい”という表現がぴったりの肖像が鎮座している。


そして、部屋の中央には椅子がぽつんと置かれていた。


「雰囲気はともかく、またこのパターンかよ」


変な意地が湧いて、座るか座らないかしばらく迷った末に折れた。


……1分経過。


椅子に腰掛けて待っていたが、何の反応もない。


「ふざけんなよ!」


帰ろうと振り返ると、入ってきた扉は消えていた。

仕方なく壁画でも調べるかと歩き出したところ、右奥の壁にいつの間にか扉が出現し、そこから男が入ってきた。


「は?」


男は、小太りの中年サラリーマンといった風体だった。

メガネをずらして汗を拭きながら言う。


「やあ、ごめんごめん。エリちゃんが急に予定変えるから油断しちゃったよ」


「……あんたが翼神なのか?」


拍子抜けして聞くと、男は手を振った。


「いやいや、ボクはネオンの同僚。あ、椅子は普通に“待っててもらう用”だから座ってて良かったのに」


「じゃあ、あんたと話すのか?」


「あ、最初だけね。立ち話もアレだから、隣行こうか」


完全に調子を狂わされた。

予想していたSF展開は否定され、異世界転移の構造も否定され、二律背反に揺れてきた俺に“残酷な現実”を突きつけながら、ふざけたアバターで容赦なく引っ掻き回してくる。


それでも、この茶番を進めなければ答えは得られない。

気が進まないまま、おっさんの後に続いた。


---


「あ、そこのソファ使って。早速だけど始めていいかな?」


部屋はホームシアターのような造りで、おっさんはスクリーンの脇に立ち、俺の返事を待っている。


「よろしく」


やや不貞腐れながら許可した。


「はい、じゃあ始めます。今日のメニューですが――

最初に翼神のアバターを選んでもらいます。翼神は実体がないから、お好みの見た目と話し方が選べます。

次に“真実をどこまで知りたいか”。これ重要。翼神が途中で聞いてくるから、“やっぱりなし”はナシだから気を付けてね。

そして最後に三択が出ます。隔離の方法なんだけど、元の世界・転生・消滅から選んでよ、ね?」


ね?じゃねえよおっさん。


「なんか話す気失せたわー」


「ごめんごめん、待たせちゃったし、早口で分かりにくかったよね」


「いや、なんかもっと雰囲気というか……」


「よく言われるそれ。雰囲気大事だよね。でも大丈夫、アバターに合わせて部屋の感じ変えるから」


「おっさんが台無しにしてんだけど」


「ごめんごめん、次から気を付けるから、機嫌直してよ」


次はねえだろ……これも試験みたいなものなのだろうか。


「じゃ、アバター決めようか」


「そうこなくっちゃ」


おっさんがスクリーンをオンにすると、部屋が暗くなり、ずらりとアバターが映し出された。


神様らしい姿から、雲間の光、宇宙人、キツネまで。

ざっと見て適当に決めようとしたところ、見覚えのある姿が目に入った。


「おい、どういうことだ?」


「親近感や憧れで入れちゃいました」


スクリーンにはモズが表示されていた。


「一瞬迷ったじゃねえか、この野郎」


「刺さりました?」


おっさんは嬉しそうに聞いてくる。


「いや……やめとく」


「残念ですハイ。ではどちらを?」


「おっさんでいいわ」


「はい?」


「おっさん一択」


「困りましたね。残業ですよ、トホホですよ」


「もういいから、早く翼神と替われよ」


ようやく調子を取り戻した。


---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ