103.ホスピタリティ
光の道は創作物のワープやゲートのようなもので、リッカは目を白黒させていたが、俺はもう理解を諦めていた。
「どこまでも、そういうもの」
「カゾヤマ、あなたは知ってるの?」
リッカが真剣に聞いてきたが、俺は首を振った。
着いた先はいかにもという大聖堂で、夕焼けに照らされる正面のアプローチにはそれなりの往来があったが、俺たちの出現を気にする者は皆無だった。
これも“そういうもの”なのだろう。
先導する双子に、リッカが言った。
「さすがに着替えたいんだけど」
さっきまでの怯えは雪原に置いてきたらしい。
エリが丁寧に頭を下げた。
「大変失礼いたしました。中ですぐにご用意いたします」
この辺りのホスピタリティは満点なのだが。
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中に入り、俺たちは部屋に通された。
リッカには双子と同じ長衣が、俺にはきれいになった初期装備――元の世界の服が用意されていた。
「何その服? 元の世界ってやつ?」
「ああ。なんで今さらかは分からん」
「すごいわねこの生地。初めて見たわ」
リッカは長衣をひらひらさせて驚いている。
ノックの音とともにエリが入ってきた。
「大司教様は明日お会いになるそうです。お部屋をご用意しておりますので、そちらでお寛ぎください」
エリに案内され、聖堂を抜けて中庭の脇にある建物へ。
通された部屋にはベッドと浴室――え、シャワー?
元の世界と同じレベルのアメニティが揃っていた。
「こちらは再生者様のための施設ですので、少しだけ贅を凝らしております。監視等は一切ございませんし、不道徳という概念もございませんので、明日までどうぞごゆっくりお寛ぎください」
意味ありげなことを機械的に言い残し、エリは下がった。
テーブルにはワイン、鹿肉のシチュー、バゲットが並び、ワイングラスまで用意されている。
リッカはまたしても驚愕していたが、先に風呂に入ろうと誘い、一緒にシャワーを浴び――さらに驚かせた。
「私も翼神教に改宗した方がいいかしら?」
「そういうもんでもなさそうだが」
食事を摂り、エリのホスピタリティに感謝しながらベッドに入り、今は二人でミードを飲んでいる。
「色々ありすぎたよね」
「ああ」
「まさか私がイセカイジンだったなんて、本当におかしな話よね」
「そのおかげでアズィの呪いから抜けられたんだから、イセカイジンも悪くないだろ?」
「そうね。でも私たちはたくさんの代償を払った」
「そうだ」
「それでも最後に、一番大きな追加料金を請求されてる」
「アズィの挑発に乗ったのは俺のミスだった。リッカの言うことを聞くべきだった」
「私はあなたの命綱だった。だけど、あなたがほどいた」
「双子みたいな理詰めは勘弁してくれよ」
「ダメよ。もう言えなくなるんだから。懲りたなら、あなたは翼神でも獣神でもなく、私を生涯崇めて生きなさい」
「はいはい、リッカ神様」
「返事はいいから、行動で見せてほしいわ」
「喜んで全身全霊を捧げます」
ミードのグラスを置き、
俺たちはゆっくりとゼロ距離の至高を目指した。
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