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『異世界アンチノミー ――翼神の箱庭――』  作者: めざしと豚汁


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100/116

100.再生

俺は夢を見ている。

ベッドの隣には、リッカが寝息を立てている――


「ついに俺もイカれたか」


塔のベッドを降り、未練が創り出した幻覚を揺り起こした。


「ん……どこ? カ、カ、カゾヤマ!?」

リッカは飛び退き、シーツを巻き付けながらベッドを転げ落ちた。


「私……アズィに……」


「すげえな。妄想ってこう見えるんだ」


「妄想? 何それ」


「夢みたいなもんだよ」


「そう……なの? ところで何か着なさいよ」


「ああ、忘れてた。待ってろ」


冷静なリッカは俺の願望が生んだ妄想だ。

だが悪くない。付き合ってやるか。


階段脇の服を手に取る。

それは――リッカの血まみれのオーバーチュニックだった。


「リッカ大変だ!」


俺はベッドに戻り、リッカを触り倒してビンタされるまで感触を確かめた。

自分の身体を点検すると、手首の縫い跡が消えている。


「まさか俺にもクライマックス御都合ミラクル来ちゃった?」


「きっとそれが来たんだよ、ね」


いつものリッカだ。


「なあ、夢を確認する手段ってあるか?」


「知らない。私は直感頼みの女よ?」


「リッカ、ここは俺が話した塔の中なんだ。夢じゃない可能性が出てきた」


「何よそれ……」


「俺も分からないが、リッカも生き返った可能性がある」


愛のパワーでなんて甘い世界じゃなかったはずだが、もう何も分からない。


「ネオンだっけ、誰か居るって言ってなかった?」


「そうだ! リッカ服を……ああ、だめだ血まみれだった。歩けるように巻き付けて」


蓑虫からワンピースのレディに羽化したリッカを連れて階段を降りた。

俺は裸だが、この際どうでもいい。


扉を開け、例の椅子の前に立つ。


「よし、座るから何があっても落ち着けよ。少なくとも敵じゃない」


俺はリッカをお姫様抱っこして椅子に座った。

カチッと音がして、部屋全体が柔らかい明かりに包まれる。

リッカの腕に鳥肌が立った。


正面の壁に天使のようなシルエットが浮かび、天井から声がした。


「私は、翼神。人類の救済のためあなたに力を――」


「茶番はいい。ネオン出てこい」


沈黙。

シルエットが消え、ジングルと共にビビッドなアニメの翼神が映し出された。


「あれれ、なんでボクを知ってるの? ていうか何その裏山けしからん状況は!」


「お前のことはエリとジラに聞いた。チュートリアル担当だろ?」


「え? ボクを無視して外に出ちゃったの? 人間、椅子があったら座るでしょ普通」


またこれか。


「俺が変なのは分かったよ。ところで飛行機や車の映像は出せるか?」


「何だよ唐突に。君は乗り物オタクかなにかなの?」


「いいから、さっさと頼む」


アニメネオンは呆れつつ、実写映像を壁に映し出した。


「リッカ、あれを見たことはあるか?」


「何よあれ……それに動く絵なんて、カゾヤマはよく平気でいられるわね?」


完全に硬直している。


「原始人は飛行機の夢を見られない……つまりこれは夢じゃないんだリッカ」


「何を言ってるかさっぱりだけど、夢じゃない確信があるのね。分かった、これは夢じゃない」


俺を盲信できるリッカさん、すげえよ。


「ネオン、こちらはリッカだ。見ての通り現地人だが、一体どういうことだ?」


「えー、分かんないよ。でも聞いてみるよ。教えてくれるか知らないけど」


通信できるんかい。


「あー、なるほど。そうですか」


ネオンは電話をする仕草をしながら、

はいはい用件は済みましたと嫌そうに返事をしている。


俺の中でまた二律背反が首をもたげたが、

この奇跡の時間を台無しにするだけだと打ち消した。


そして、上司のうざ絡みを乗り切ったネオンは、俺たちに告げた。


「謎は解けました。続きはこのあとすぐ!」


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