7-14 sideルイス(ハヤト)
二人での話が終わったらしく、ゴードンがクラリアを連れてこちらにやってきた。
「ゴードン、話は終わったのか?」
俺が尋ねると、
「うむ。俺はクラリアと婚約することになった」
ゴードンは笑って答えた。
「ええええええええ?!」
俺たちはいっせいに声を上げた。
まだ信じられない。
前世を明かすとは言ってたが、それで即婚約って?!
唖然とする俺たちの中で、一番先に己を取り戻したのはハリエットだった。
「それは、おめでとうございます。ゴードン様、クラリア様」
と、にっこり笑うハリエットに続いて
「お似合いのお二人ですわね」
アンリエッタもにっこりと笑った。
「うんっ…!ゴードンなかなか恋人出来ないからさ、心配してたんだよー」
レイズが言ったので
「そうだな。これで俺たちもひと安心だ」
俺もそう言い、皆で笑って祝福した。
「…でな、俺は子爵家の次男だが、クラリアは伯爵家の令嬢だろ?こういう身分の差は許されるんだろうか?」
とゴードンが俺に聞いてきた。
するとレイズが
「何言ってんのー?ゴードンは将来ルイスの側近になる予定なんだからさ、他の上位貴族令息とかより有利なんだよ?」
と呆れたように言った。
「いやまだ確定ではないだろう?候補だの予定だのでは不確実だからな」
ゴードンがちょっと不安そうに言うので、
「お前らの婚約に文句言うやつがいたら、俺がどうにかしてやるから」
俺が笑って言うと、
「そうだよー、いざって時の王家だよー」
とレイズも笑って言った。
ハリエットが
「そうですわね。婚約破棄命令もできるくらいですもの。婚約を強引に認めさせるくらいお手の物ですわね」
と言ったので、俺たちはレイズとクラリアの件を思い出してふきだした。
「まあ、そういうことだ」
俺が笑いながら言うと、ゴードンは
「うむ、頼んだぞ!」
と笑い、クラリアもゴードンの隣で笑っていた。
ゴードンがクラリアに差し伸べた”救いの手”がクラリアとの婚約という形になったことには正直俺も驚いた。
が、いかにもゴードン…先生らしい決定だとも思う。
中途半端に優しくしておいて、友人としてとどめるということは、優しいゴードンにはできなかったのだろう。
そう思って後で寮に戻ってからゴードンに言ってみると、
「いや、前世の年齢が近かったことが大きなポイントになったんだ」
とゴードンはそう答えた。
「え?クラリアって前世何歳だったの?」
レイズが尋ねると、ゴードンは
「22歳の大学生で卒業目前だったそうだ」
と言った。
レイズは
「…なるほど、二十代喪女だったんだ」
と何やら納得したようにつぶやいた。
するとゴードンが
「前世の俺は24歳だったから、いくら今の体が14歳でも、14歳の子と婚約などはちょっと…と思っていたんだ」
とそう言った。
「あ…なるほど…」
俺とレイズは同時に言って、納得した。
「…それってさ、同情なの…?」
とレイズがゴードンに向かってそう聞いた。
「前世で年が近かったってわかって、同情して婚約することにしたの?」
眉をひそめてそう言うレイズに、ゴードンは
「いや、最近のクラリアを見ていて、好ましいと感じるようになってきていたんだ」
と答えた。
そして続けて
「もしも前世がお前らぐらいの年だったとしたら、俺も少しは迷ったかもしれないが、意外にも年が近かったと知って、迷いはなくなった」
そう言うので、俺たちはさらにゴードンの言葉を待った。
「貴族同士の婚約は家同士で勝手に決めるものだというのは、レイズの件でつくづく良くわかったが、それでも当人たちが好意を抱きあっているなら、それにこしたことはないだろう?」
ゴードンが真剣に言うので、俺たちはもう何も言えなかった。
「それにな、時々オタクっぽいことを言うのが面白くてな。そういう所も気に入ってるんだ」
ゴードンがおかしそうに笑ったので、
「そっかぁ」
「なるほどな。おめでとう、ゴードン。仲良くやれよ」
俺たちは安心して、改めてゴードンを祝福した。
もう少しで第7章も終わりです~。大団円までもうちょっと!です。




